2006年 正月

張貼日期:Mar 05, 2011 5:36:1 AM

かつて、ふるさとでは一月七日の七草の日をナンカブと言って、七草ゾロ(大根や蕪の葉などを入れた雑炊-七草粥-)を食べるとされる日であった。このナンカブのブは「ビ<日>」の訛音である。そして、ナンカはナヌカの変化形である。

古代中央語では「七日」をナヌカ、「九日」をココヌカといったようである。万葉集には「奈奴可」が見え、土佐日記には「けふ、舟に乗りし日より数ふれば、みそかあまりここぬかになりぬ」といった用例がある。

『日本言語地図』(国立国語研究所編)によれば、「七日」の呼び方は東西で対立している。すなわち、新潟、長野、静岡以東ではナノカ、富山、岐阜、愛知以西ではナヌカである。例外は、北海道、千葉、八丈島のナヌカ、鳥取、岡山、隠岐のナノカである。そして、ナヌカの分布域内の、ふるさと富山の五箇山郷や九州南部などにはナンカの形が存在するのである。沖縄本島では字音語でシチニチという。なお、「九日」については、「七日」をナノカという地域では全域でココノカである。一方、「七日」をナヌカという地域では、高知のほか、岐阜南部、愛知、三重、和歌山、京都北部、兵庫北部、山口、愛媛中部、高知中部、大分でココヌカというほかは、ほとんどがココノカである。つまりココノカの分布域はナノカとくらべてずっと広い状況にあるわけである。

ココヌカからココノカへの変化には、おそらくココノツ(九つ)の音がかかわっていよう。それに対して、ナノカはナナツ(七つ)の音とはかかわらないのである。ナノカのノカは、ココノカのノカへの音的牽引によって生まれたものと考えられる。

2006.1.7台北にて