2005年 5月

張貼日期:Mar 05, 2011 5:32:22 AM

「様(さま)」には、上の語に接続して、その方向、方面の意味を添える用法があった。古典では、たとえば『更級日記』での、「京さまへなむ来ぬる」などといった表現が挙げられる。

「雨が横ざまに降る」などの場合は「ざま」になる。「ざま」は、そういう動きの状態の意味を表す。「後ろざまに倒れる」は、後ろ向きのままに倒れるということである。「死にざま」はその人の死んだときの様子、「ふり向きざまに切りつける」の「ふり向きざま」は、ふり向くやいなやということである。

その方向や方面を表した「様(さま)」は、転じて人の居所、身分、氏名に添えて、その人に対する尊敬・丁寧の意味を表すようになってきた。江戸時代に書かれた『貞丈雑記』には、「何がし様の様、上古にはなき事也。京都将軍時代にも公方様、等持院殿様などと云は中頃よりの事なるべし」といった記述が見える。したがって、このような用法は室町時代から始まったもののようである。なお、「さま」から「さん」への変化が上方地方で先行した。近世後期の大坂ことばを記した『浪花聞書』(文政年間)には、すでに「様(サン) 男女とも常言、さまといはず、観音さん、薬師さんなどといふ」のようにある。

以上、「レオ様」「ヨン様」の「様(さま)」の由来について記した次第。

2005.5.10