2006年 夏七月
張貼日期:Mar 05, 2011 5:38:34 AM
中学生の頃、ふるさとの山峡を流れる庄川へ一人で岩魚を釣りに出かけたことがある。長い時間糸を垂れていたが、一尾も釣れなかった。
(そういえば、冬、友だちと兎を捕るためのワナをかけたときにも、私の作ったワナには兎がまったくかからないのであった。)
落胆しての帰り際、川の傍にあったニジマスの養殖池で、ふざけて釣り糸を垂れてみたところ、あっという間に数尾が餌に食いついてきたのである。
そのうちの二尾を家に持って帰った。祖母がそれを見て、「本当に川で釣ったんだろうね」と聞いてきたので、「そうだよ」とうそをついたのであった。
夜になって、帰宅した父がまた同じ質問をしてきた。そのとき、祖母が間に入って、「本当に釣ったんだと言っているから・・・」と、かばってくれたのであった。
私はうそがばれなかったことを安堵しつつも、黙って遠くを見つめたような父の眼の光が何故か心に残った。
大人になってから、そのことを思い出して、一人で冷や汗をかいた。ニジマスは庄川に棲息する魚ではないことが分かったからである。
2006.7.21