2021年 宝永噴火

張貼日期:Aug 31, 2021 12:10:8 AM

最近の伊豆諸島周辺で相次ぐ地震をめぐって、それを富士山噴火の予兆ではないかと危惧する声が専門家から上がっているようである。

その昔、大学院修士課程の入試対策の一環で、受験科目にある古典読解の練習として新井白石が著した『折たく柴の記』を集中的に読んだのであるが、その中に、宝永の大噴火(1707年12月発生)における江戸での状況を描いた記事があったことを思い出した。

先般、新たに岩波文庫本の『折たく柴の記』(松村明 校注)を手に入れたので、その箇所を確認したところである。抄出する(カッコ内は真田の注)。

よべ地震ひ、此日(太陽暦で12月16日)の午後(うまのとき)雷の声す。家を出るに及びて、雪のふり下るがごとくなるをよく見るに、白灰の下れる也。西南の方を望むに、黒き雲起りて、雷の光しきりにす。…白灰地を埋みて、草木もまた皆白くなりぬ。戌(いぬ)の時ばかりに、灰下る事はやみしかど、或は地鳴り、或は地震ふ事は絶ず…夜に入りぬれば、灰また下る事甚し。「此日富士山に火出て焼ぬるによれり」といふ事は聞えたりき。これよりのち、黒灰下る事やまずして…此ほど世の人咳嗽(がいそう)をうれへずといふものあらず(こんなにも人々が喉を痛めて激しい咳に悩まされるようなことはなかった)。

宝永噴火から314年が経過している。富士山はそれ以前には平均して100年に一度は噴火を繰り返していたという。したがって、300年以上にわたって鳴りをひそめていることが何とも無気味なのである。

富士山噴火のXデーはいつなのか。いま宝永クラスの大噴火が起きれば首都機能はほぼ完全にマヒするだろう。そのためには日ごろからの備えが欠かせないはず、とは思いつつも、いまだ切迫感の高まらない日常を過ごしている私である。

2021.9.1