張貼日期:May 31, 2019 1:0:57 AM
いま通っているスポーツクラブでは、マシンの上で走ることだけを自分に課していたのだが、このところ少し走りすぎたせいか、踵に違和感があって、歩くのに少しばかり支障が出てきてしまった。踵の周辺を押さえても痛くはないので、骨に異常があるわけではなく、筋肉の疲労ではないか、とのインストラクターの見立てである。そこで、踵を使わないフィットネスマシーンに切り換えることにした。
そのついでに、このスポーツクラブの名称NASは何の略語なのかと尋ねてみた。しばらくの間があって、「確か、ニッポン・アスレチック・サービス(Nippon Athletic Service)だったと思います」との回答であった。
このようなものをアルファベット略語という。大文字のアルファベットを連ねた略語には、UNESCO、AIDS、NASDAQなどがある。私たちは、これらをまるで一つの語のような扱いをして、「ユネスコ」「エイズ」「ナスダック」と読んでいる。実際、NASも「ナス」と呼ばれている。
ところで、私は以前からNASの綴りに何かしらの親しみを感じていたが、そのわけに最近気が付いたのである。
それは、国立国語研究所に勤務していた頃のこと。当時、研究室の室員は各自の姓をアルファベット略語で表記することを習わしとしていた。徳川宗賢さんはTOK、佐藤亮一さんはSAT、白沢宏枝さんはSIR、沢木幹栄さんはSAW、そして私はSANと表記していたのであった。
私のSANは、逆にするとNASになるわけである。それが親しみの理由だったか、と思い至った次第である。
そういえば、アルファベット略語ではないが、かつて、佐藤さんと白沢さんと私とで共同執筆した論文の著者名を「藤沢真」としたことがあった(藤沢真「味の表現の地域差」『言語生活』286、1975.7)。
「藤沢真」とは一体誰なのかと、その当時、研究者たちがあちこちを詮索していたことが思い出される。
(2019.6.1)