張貼日期:Sep 02, 2014 5:16:49 AM
今春、大学研究棟の外階段の廂にツバメが久しぶりに巣作りを始めた。
数年ぶりのことなので、心が高揚した。出勤の折ごとに、その出来具合を眺めることが日課となった。
ところが、である。巣がほぼ完成するかに見えた段階で、当のツバメ自身がその巣を壊し始めたのである。番の間に何が起こったのか、私には知るすべもないのだが、かなりのショックをおぼえた。
閑話休題
オーストラリアのキャンベラで過ごしたのは1991年の夏のことであった。
オーストラリア国立大学(ANU)のresearch fellowとしての招請に応じての滞在であった。お世話いただいたバックハウスさんの計らいで、構内の林の中にある瀟洒な一戸建ての家を宿所とすることができた。その家で、タイからの留学生ウォラウットさんやインドからの留学生パンカジさんたちと折々にパーティーをして楽しんだことが忘れられない。
パーティーを終えて、窓の外を何気なく眺めていたときのことである。叢林から一羽の鳥がよろよろと地面に落ちてきた。すると即座にその鳥をめがけて数羽の鳥が突撃してきて、つつき始めたのである。しばらくして別の大きな鳥が現れ、その鳥を食いちぎり始めた。
私はそれを怯えながら見つめていた。「鳥葬」などということばを想起しながら。
子どもの頃から、多くの野鳥たちが空を飛び回っているが、あの鳥たちの死骸を見ることがないのは何故なのだろう、と思ってきた。鳥たちは一体どこで死ぬのだろう、と。
その謎がやっと解けたような気がしたのであった。
2014.9.1