2017年 紫陽花

張貼日期:Jun 01, 2017 1:27:11 AM

大学での個人研究室に所蔵していた専門書(多くは国語学関係の書籍)の措置に悩んでいた折に、その引き取りをこころよく受入れてくれ、わざわざ東京から奈良まで車で来て対処してくれた渥美書房に、そのうち挨拶に伺おうと思いつついたのだが、やっと東京暮らしも落ち着いてきたので、その行動を実践することにした。

と記すと、やや大げさで、実は挨拶がてら東京下町ブラリ散策を図ろうと考えたのである。渥美書房の最寄り駅は、都営荒川線の終点の早稲田停留所の一つ手前、面影橋である。そして、私の寓居から都営荒川線への最短の停留所は、起点の三ノ輪橋の二つ手前、荒川区役所前である。

都営荒川線は東京都心に唯一残る路面電車で、愛称は「チンチン電車」。荒川区の三ノ輪橋停留所から新宿区の早稲田停留所までを結ぶ12.2 kmの間に停留所の数が30ある。どこか昭和のおもかげを残す沿線を巡り、ゆっくりと1時間ほどをかけて走る。

路面電車だが専用の軌道があり、車道を走る区間は王子駅前と飛鳥山の間だけである。帰り際、王子駅前で途中下車し、近くの飛鳥山公園に登った。とはいえ、この山は都内で一番低い山だとか。公園周辺には散策にちょうどいい歩道が整備されていて、すがすがしく爽やかであった。王子駅前と上中里駅の間の歩道は「飛鳥の小径」と称されている。大和の「山辺の道」のことが思い出された。

歩道には、アジサイの花が咲き始めていた。アジサイは私の大好きな花である。アジサイの花の彩りを見ると、何だか気持ちが和むのである。その理由は分からない。花色が変化するので、アジサイの花言葉は「移り気」である。西洋には“You are cold”(あなたは冷たい人ね)といった花言葉があるらしい。この表現もまた小気味よくて好きである。

2017.6.1