張貼日期:Mar 05, 2011 6:16:38 AM
北欧のフィンランドに出かけてきた。
ヘルシンキ大学での「フィンランドにおける日本語」セミナーへの招請に応じての出張であった。
晩秋のヘルシンキは気温4度前後の毎日であった。
少し寒かったが、数枚の黄葉を残した街路樹の黒い枯れ枝が建物の黄土色の壁に映えて、なんとも美しい光景であった。ベルナール・ビュッフェの線画に描かれるその原物を見ているような気分であった。
セミナーの終了後、軍事博物館を訪れた。そこには、いわゆる「冬の戦争」の展示がなされていた。「冬の戦争」とは、フィンランドが、第二次世界大戦中の1939~40年に、国境紛争をめぐってソ連と戦った自衛の戦争のことである。
1939年、ソ連とドイツによってポーランドが分断されたが、ソ連はさらにエストニア、ラトビア、リトアニアを占領し、フィンランドに侵攻したのであった。その後、フィンランドは1941年にドイツと結んで対ソ戦争に参加、 1944年にソ連に降伏したのであった。この1941年以降の戦争を、当地では「継続戦争」と称している。
このような歴史を現在の若い人たちはあまり知らないようである。というよりも話題にすることがタブーであるように見受けられた。
ヘルシンキの沿海にあってユネスコの世界遺産となっているスオメンリンナ島の要塞跡も訪れた。この海上要塞の建設はフィンランドがスウェーデン王国の一部であった1700年代に始まった由である。ただし、フィンランドがロシア帝国に併合されていた19世紀のなごりなのであろう、一部の大砲は西側のスウェーデンの方角に向けて設置されていた。
大国の狭間にある国の立場の厳しさということを改めて思い知らされた日々でもあった。
2010.11.1