張貼日期:Apr 17, 2021 4:26:49 AM
銭湯と言えば、下宿生活をしていた学生時代には必ず利用する場所であったが、その後においては日常まったく訪れることのない所となっている。
この地(東日暮里)に引っ越してきた当初、寓居近くの道で、外国の人から、「このあたりに有名な銭湯があるそうなのですが、それはどこでしょうか」と尋ねられることがあった。その時には、それが「(あらかわ)帝国湯」のことだと思わなかったのである。確かに、寓居のすぐ近隣に、「帝国」という時代がかった名前を冠した銭湯のあることは知っていた。破風造りの木造の建物で、その構えから老舗であることは分かっていた。しかし、今にも朽ちそうな古びた遺物のように見えて、何だか近寄りがたいと思っていたのであった。
このたび、遅ればせながら、その銭湯を体験してみようと思い立ったのである。
年季の入った暖簾をくぐって中に入って驚いた。入口の横に高く設けられた番台の存在も懐かしかったが、外観からは想像もつかないくらいの不思議な世界が広がっていたからである。脱衣所の天井は格子模様の格天井となっており、脱衣所から浴場にかけての外側には庭園があって、湯上り時にはその縁側で涼むことができるような構造となっている。番台で聞くと、都会の自然に親しめるように季節ごとの植物を植えているのだという。なお、この店の創業は大正5年で、現在の建物は昭和28年に造られたものとのこと。まさに昭和時代の風情を味わえるレトロな銭湯であった。
しかし、浴槽に浸かろうと足を踏み入れた瞬間にとび上がった。あまりにも熱いのである。それが帝国湯の売りのようでもあり、“江戸っ子は熱いお湯を好む”ということを実感するのであるが、熱湯がまったく苦手な私には耐えられなかった。そこで仕方なく薬湯と称されている温めの小さな浴槽に浸かることにした。
ところで、きょう日このような昔ながらの運営、そして設備のメンテナンスは容易なことではないだろう。「是非とも存続を期待する…」などといったコメントが無責任で勝手な言い分であることは承知の上、あえてそのように述べたいのである。
2021.4.18