2014年 Knock on wood !

張貼日期:Jun 30, 2014 12:49:46 PM

三浦しをんさんの書き振りにはどこかで共鳴するところがある。

「神去なあなあ日常」が、このたび映画化されたということで観にいってきた。

小説では、あるきっかけで山村での林業に1年間携わることになった都会育ちの若者が、山人たちの厳しい指導や危険と隣り合わせの過酷な林業の現場で苦闘しながら、人と自然との触れ合いのなかで成長していく姿を描いている。

映画の撮影は、三重県の山間部を中心にオールロケで約1か月半かけて行われたという。小説と違ってエンターテインメントの要素が多くなってはいたが、山の空気の臨場感には素晴らしいものがあった。木々の匂い、草の香りまでもが感じられるようであった。

濃い緑に映える木々の映像を眺めているうちに、山奥の村で生活した自分の少年期の記憶が沸々と蘇ってきた。

まずは葬送の隊列を子供心に怯えながら眺めていたこと。それは伐採の折に切り倒された大木の下敷きなって息絶えたと聞いた近所の家の主人の葬儀であった。

次に想起したのは、神隠しのこと。一人の幼児が突然に行方不明となり、数年後、遠くの山峡で白骨遺体で見つかった、と祖母から聞いたことがある。神隠しにあったんだ、天狗さまの仕業だよ、と祖母は言っていた。

その祖母が、後に徘徊するようになった。初夏のある日、山に入ったまま帰らないことがあった。山中を捜索して、ようやく中腹の窪地に佇んでいたところを見つけ、父が背負って山から下りてきた。

そのとき、祖母は父の背中で手足を突っ張りながら、恥じらい気味に、「若い男が、男が・・・」と呟いていた。

2014.7.1