張貼日期:Apr 30, 2014 2:17:32 PM
会話の中で、「~でしょう」といった言い回しで、聞き手が知っている、あるいは分かっているはずの事柄を取り上げて、確認や同意を求めるような用法は「確認要求」と称される。
しかし、この点に関して、台湾の日本語話者の談話において、聞き手が知らないはずの事柄を提示しつつ、それをもとに後続の発話を展開するといった用法の使用例が多数認められることを簡月真さんがかつて明らかにした(簡月真「台湾高年層の日本語にみられるモダリティ-『ダロウ』と『デショウ』を中心に」2006.8.19台湾日本語文学会)。
このような用法は台湾だけではなく、私が収集した韓国やミクロネシアなどの日本語談話にも認められたので、簡月真さんとともに検討し、この用法を「新情報認知要求」と名付け、共同提案として公示したのは、2006年9月23日付けの本コーナーであった。そこでは、次のようにも記した。
近年、若者の間で、「~じゃないですか」や「~でしょ」による、ここに提示した新情報認知要求の運用が増えてきていることが観察される。次のようなものである。
・(初対面の人に対して)私って恥ずかしがり屋 じゃないですか。だから、
・(相手が知っているかどうかにはお構いなく)私、(血液型)B型でしょ。ですから、
ところで、旧統治領の日本語話者の談話において、このような表現が多用されるのは、聞き手(・インタビュアー)が理解している(あるいは聞き手にまず理解させる)ことを前提としての<語り>といった談話自体の性質が関わっているのではないかと考える。それは一面ではego-centricな運用でもあるわけで、その点で近年の若者の表現行動と類似するのではなかろうか。
新しい用例を加えよう。
就任会見などでの発言が物議を醸したNHKの籾井勝人会長が、自身の発言の影響を認め、NHKの番組で視聴者に向けて謝罪と説明をおこなった(4月13日)。ただし、それは会見ではなく収録番組であった。収録形式を採ったことについて、籾井氏は、次のように語ったとある(朝日新聞による)。
・(適切な言葉を使えないので)僕は生放送には耐えられないでしょう。耐えられるだけのスキルを持ちたいと思っているんですが、正直言って無理かなと・・・。
2014.5.1