演劇家の蜷川幸雄が、2006年に〈年齢を重ねた人が、その個人史をベースに、身体表現という方法によって新しい自分に出会う場を提供する〉といった発案のもとに立ち上げた異色の高齢者劇団「さいたまゴールド・シアター」が今年で解散することになった。劇団のメンバーは現在33人(70歳~95歳)、健康状態などで出演できない人が多くなったからでもあるようである。
その最後の公演がこのたび催されるというので観劇に出かけた。
最終公演「水の駅」は、セリフのない劇、太田省吾が確立した身体表現の極致とも言われる、いわゆる沈黙劇であった。さまざまな人が1本の蛇口から流れ出る水を求めて行き交う、その動きのテンポが各自の人生を物語るといった展開で、舞台での演者たちの悲哀と激情を込めた演技には心揺さぶられるものがあった(構成・演出は杉原邦生さんによる)。
ところで、彩の国さいたま芸術劇場は、1994年10月の開館以来27年以上が経過し、老朽化したので、来年の秋から全施設を対象に大規模改修工事を実施する由。そのため2022年の10月から2024年の2月まで休館するとのことである。
施設の老朽化といえば、数年前に東京に引っ越してきて親密さを感じていた周辺の建物の改修や移転が、このところ立て続けに進められていることが気になるのである。
かつて、月刊『言語』の印刷をしていた近所の「壮光舎印刷」の社屋は、2018年12月に、同じ荒川区ではあるが隅田川の畔の地に移転した。旧社屋の跡にはマンションが建っている。
中央区銀座に出かける際にしばしば訪れていた天ぷら店「天国(てんくに)」は、店舗の入っていたビルから退去し、2020年2月、近くの場所に新たな店舗をオープンした。
台東区根岸にある伝統的豆富料理店「笹乃雪」は、店舗の老朽化のため移転を決めた由。現在、その場所にはマンションが建設中である。なお、お店は近々の再開を目指しているようだが、残念ながら新店舗の場所や開店予定日は未定とのこと。
2021.12.30