2007年 冬二月

張貼日期:Mar 05, 2011 5:45:6 AM

ちょうど今頃のことである。

子どもの頃のふるさとでは雪が2、3メートル積もるのが普通であった。

前日に比較的暖かくて雪が雨となって降り、翌日に晴天で早朝に気温が急降下したときなどに、積もった雪の表面が固く凍りついて沈まずに歩けるようになった状態、いわゆるアイスバーンのことをシミシミバンバンと言った。このシミシミは「凍み凍み」で、「凍みる」という動詞の連用形を重複させたもの、バンバンは固い状態に着目した擬態語である。大人たちは単にシミシミと言っていたが、われわれはシミシミバンバンと言った。

この状態が発生すると朝早くに起きてあちこちを喜び勇んで駆け回り、雪に閉じこめられて活動のできない日頃のうっぷんをはらしたのである。大人たちはこの期を利用して材木を山から滑らせて下ろしたり、橇で運んだりする作業にはげんでいた。

この凍結した積雪面で自転車を乗り回したのは小学校高学年の頃であった。

ある日のこと、山の中腹まで遠出し、その帰り、坂道で勢いのついた自転車の車輪に木の枝が挟まって、その反動で身体だけが宙を舞って谷に転落したのである。その瞬間のことを今でもスローモーション的に感じることができる。当時ちょうど柔道をならっていたので無意識に受身の体勢で谷底に着地することができたのだが、見上げると太い竹槍のような形の木の株があちこちに剥き出していた。もう少しで串刺しになるところだった。安堵すると同時に自転車のところまで一目散に駆け上ったのだが、その瞬発力は、自分でも不思議なくらい、まさに本能的ともいえるものであった。

2007.2.24