2018年 迷跡 MICI

張貼日期:Jul 29, 2018 1:53:34 AM

台湾での日本語系クレオールを「母語」として運用しているのは、宜蘭地域の東岳村、澳花村、金洋村、及び寒渓村の4村である。

東岳村では、「私たち」のことをwaciと表現する。これは、日本語のワシタチがワタチと縮約され、さらにワチとなったものである。また、「誰」のことをlareと表現する(ダレ→ラレ)。

かつて、東岳村で、青年たちの企画による村の歴史を描いた舞台劇を見る機会があった。その劇の演目は「waci lare?」(中国語訳は「哇系啦類」)であった。これは「我々は誰(何者)なのか」といった意味である。

劇の内容は。山中での平穏な日々のなか、突然に日本がやってきた。そして自分たちの民族姓名は日本の姓名に変更させられた。その日本が撤退すると、今度は中国が入ってきた。そして自分たちの名前はさらに中国の姓名へと変更させられた。3つの姓名を持った我々は一体何者なのだろうか、と問う内容であった。

私の知人も、ほとんどの人が2つ、乃至3つの名前を持っている。たとえば、ハユン・カニンさんは、山川恵一という日本名と、潘正徳という中国名を持つ(いずれも仮の名前で表記)。

東華大学原住民民族学院の宜蘭クレオールを母語とする学生の劉紹萱さんらが、簡月真さんの授業を受けて一念発起し、自分たちの村(澳花村)の言語実態とアイデンティティを描くドキュメンタリー映画を民族語言與伝播学系での卒業制作として完成させた。その映画が先般ユーチューブ上に公開されたので紹介する。

https://youtu.be/1slwo6yarLU

題名は「迷跡MICI」。miciはクレオールでの語であるが、日本語の「道」に由来する。この題名そのものが宜蘭クレオールの歩みと将来を、まさに象徴的に表していよう。

英語と中国語の字幕を付けているので、内容が理解しやすいと思う。こちらの方も是非見ていただきたい。

(2018.8.1)