2005年 4月

張貼日期:Mar 05, 2011 5:31:45 AM

阪大に勤めて間もない頃、隣室の哲学科の教授から、廊下で突然に「ピンからキリまでのピンって何なのでしょうね」と尋ねられ、返事に窮して「調べておきます」としか答えなかったことを思い出す。

「ピンからキリまで」はカルタの用語から生まれた表現のようである。

「ピン」はポルトガル語のピンタ(英語のポイント)の略で、「点」の意味が「一」の意味で使われた。そして、それが「最初」、あるいは「最上」の意味に転じたのである。

「キリ」については、ポルトガル語の「クルス」(十字架)が転訛したもので、「十」の意味だという説があるが、これは不審である。天正ガルタでは、「最後」の十二の札を「キリ」と呼んでいる。だから、「キリ」を十字架という意味の語の訛りとするのは誤りだと思う。「キリ」は、日本語そのものの「切り」で、最後の意味であろう。「きりがない」「きりをつける」などの「きり」だと考えられる。

ところで、「ピンはね」という言い回しがある。いわゆる「上前をはねる」ということである。この「ピン」も上の「ピン」と同じ語であるが、韓国の一部ではこれを「ピンタン」と言っている。「ピン」については日本からの借用語と考えられるのであるが、「タン」は韓国語では「跳びはねる」ことの擬態語の由である。これは、「上前をはねる」の「はねる」の翻訳の過程で起こったものなのであろうか。不思議な現象で、そのプロセスは大変に興味深いところである。

2005.4.5