張貼日期:Mar 05, 2011 5:40:54 AM
研究ノートに「大丈夫よ」という日本語表現を書き留めたのは、ちょうど1年前のことであった。
それは、天皇家の長女・紀宮清子さんが、挙式当日の朝、両陛下に最後のあいさつに出向いた場面で、彼女を抱きしめながら語りかけたという皇后のことばである。
何が大丈夫なのかと問うのは野暮というもの。短い表現のなかに万感の思いがこもっていよう。
「丈夫」の本来の意味は一人前の男子のこと。それが、健やかで元気だという意味になり、さらに「大」を冠して、しっかりしていて問題がない、危なげなくて安心ができるといった意味あいで使われるようになった。
近ごろ、「大丈夫ですか」という表現が、いわゆる問題な日本語として俎上に載せられている。スーパーのレジで、「駐車券は大丈夫だったですか」と尋ねられる、また、研究室の入り口で学生が、「今って大丈夫ですか」と問う、あの「大丈夫」のことである。「よろしいですか(いいですか)」と単に確認すればいいはずなのに何でことさら問いただすのかと糾弾されているのである。
しかし、このように表現すること自体、単なる確認ではない何らかの思いやりや気配りの心を彼ら/彼女らが伝えているわけで、私自身としては気に入っているのである。
2006.11.15