2015年 紅葉狩り

張貼日期:Nov 30, 2015 2:15:32 PM

紅葉狩りに正暦寺に出かけた。

正暦寺は奈良市東南の郊外の山間にある。境内の3,000本を超えるカエデが色づく頃には、木々の黄色もまじえて山全体が美しい錦で着飾ったように見えるところから、ここは「錦の里」と称されている。

紅葉を映して流れる清流、菩提仙川の水を使って醸造された「菩提泉酒」は古来有名である。日本酒は、もともと濁り酒だった。室町時代に「無上酒」と呼ばれた清酒(すみさけ)を醸したのが正暦寺であった。そこで、ここには「日本清酒発祥之地」の石碑が建っている。

さて、酒の話。

20代の頃は、酒といえば二級酒、それを熱燗で飲むのが普通だった。銘柄など考えることはなかったように思う。そんなことを想いながら、最近読んだ篠原徹さんの『酒薫旅情 琵琶湖が誘う酒と肴の俳諧民俗誌』(社会評論社)に、同じ思いが綴られていて感慨深かった。

五十年ほど前といえば、私が学生のころであるが、酒は二級酒そして燗酒で飲むのが普通であり、おでん屋の古びた座敷ではテーブルの真ん中に盃洗の容器に水が張ってあったりした。

銘柄なんて考えたこともなかった。

それが、冷酒や地酒の旨いものなどに関心が集まりだした。

新潟の「越の寒梅」などはその典型的な例である。

篠原さんは、私と同世代である。かつて私の編集した『命名の諸相』(大阪大学社会言語学講座)の中に、留学生による「焼酎のネーミング」というレポートがあって、それに強い関心を示してくれたことがあった。このたびの『酒薫旅情』を読みながら、さもありなん、と感じた次第である。

ちなみに、その昔、したたかに浴びた翌朝の、二日酔いの気分をそのままに詠んだ私の一句をご披露しよう。

酒飲めば いとど鋭き 今朝の笹

2015.12.1