2003年 春

張貼日期:Mar 05, 2011 4:41:37 AM

半年前の昨年9月、わたしは中国東北部の延吉市にいた。延辺大学での「社会言語学特殊講座」での講師として招請されたのであるが、折しも9月3日は延辺朝鮮族自治州成立五十周年の式典の日であった。その式典にも招待されて参加することになった。

式典の会場には5万人近い人々が集まっていた。北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の専門家の指導を受けたというマスゲームは気味が悪いくらいに整然としたものであった。中学生たちの描く人文字の鮮やかさにも圧倒された。民族衣装を身にまとったたくさんの朝鮮族の女性たちが祝典の雰囲気を盛り上げていた。

ここはかつての満州国の一角である。高年層の人々は今も日本語を使用することができるのである。その人たちの日本語運用の実態を観察することが、この訪問におけるわたしの中心的な目的であった。

しかし、現在も日本語がリンガフランカ(共通語)として機能している台湾の山岳部などとは異なって、この地では、いわゆる文化大革命で弾圧された経験を持つ日本語使用者の多くが寡黙であった。このことはいずれどこかで書きたいと思っている。

延辺大学の林成虎教授が、「『北国の春は遅い…』という、映画での高倉健のセリフが身にしみます。」と語っていたことも忘れられない。

2003.3.30