2010年 緑

張貼日期:Mar 05, 2011 6:13:1 AM

近くのスーパーで食料を仕入れての帰り際、園芸植物が置かれているコーナーにふらりと立ち寄った。

殺伐とした研究室を明るくするために花など飾ろうかと思い巡らしていた折でもあり、鐘形の赤い花が群がって咲いている鉢植えに心が動いた。何よりも多肉質の葉が陽の当たらない研究室でも耐えてくれそうに思えたのである。

オフィスアワーに訪ねてきた学生が、机の上のその鉢花を見て、「きれいですね。何という花ですか」と聞いてきた。気に入って買ったのだが、名を知らない。「さあー」と言ってことばを濁した。

再度、そのコーナーを訪れ、花の名前を確かめた。「カランコエ」とある。辞書によれば、「カランコエ」はラテン語で、日本で流通しているのは、マダガスカル北部の山脈に稀産するカランコエ・ブッロスフェルディアーナの園芸品種で、第二次世界大戦前にドイツの商会から売り出されたのでこの名があるとのこと。

このごろ、新しくおぼえたことばはすぐに忘れてしまう。「カランコエ」も同様、残らない。いつものように記憶ストラテジーとしての地口(口合)法を試みる。しかし、「カランコエ」についてはむずかしい。カランは「蛇口」、コエは「声」などと語呂合わせをしてみるが、時間がたつと忘れそう。

そうこうしているうち、浴室からのボイス・メッセージ、「オフロガワキマシタ」を連想するにいたった。そう、これだと「カランコエ」も忘れることはなさそうだ。

ただし、このところ、花が落ちて緑の葉だけになったその鉢植えに目をやるたびに例のボイス・メッセージが浮かんでくるので、少々困っている。

2010.5.10