張貼日期:Nov 27, 2017 12:4:32 AM
今年の夏まで書斎の窓から東京スカイツリーが間近に見えていた。しかし、隣にビルが建ったせいで、屋上に行かないと見ることができなくなってしまった。
スカイツリーを見るたびに、奈良でしばしば訪れていた法隆寺の五重塔のことが思い出されるのである。それは、姿かたちではなく、構造設計についてである。
スカイツリーには、地震対策としての最新の制振技術が取り入れられている。いわゆる質量付加機構と言われる装置である。制振技術とは、地震による揺れをできるだけ小さくする技術のことで、名称は「心柱制振」。この「心柱」は法隆寺の五重塔などで内部の中心に設置されている柱のことである。
法隆寺の五重塔は木造の建築物としては世界最古の建物のひとつである。しかし、長い歳月を通して度重なる地震に見舞われているのに、一度も崩壊したことがない。その強さの秘密は、地面から上部へ貫くように備えつけられている「心柱」にあるようだ。「心柱」は他の骨組みと直接にはつながっていない。したがって、地震で塔体が揺れるとき、違う揺れ方をする「心柱」によって、それぞれの揺れが打ち消し合うように設計されているのだと考えられる。
スカイツリーはこの仕組みを利用したのである。地震時には、中央の鉄筋コンクリート製の柱が外周部の鉄骨製の塔体と違った揺れ方をすることで、全体の揺れが抑えられる。「心柱制振」と名付けられた所以である。最先端技術の行きついた先が、1300年以上も前の建築物の構造とそっくりになる、ということ自体が驚きである。古代人の技術の高さに思いをはせるのである。
なお、スカイツリーの足元は三角形だが、上にいくにつれて円形に変化している。そのため幅の狭い土地でもしっかりと足元が支えられ、上では強風を受け流すことができる。また、中心部が少し膨らんでいる「むくり」と、中心部の少しへこんでいる「そり」がデザインされていて、傾いているような不思議な見え方になる。ここでも古い木造建築の技術が応用されたのだという。「むくり」とは柱の中心部の膨らみのことを指す。一方、「そり」とは例の日本刀にも見られるような「そり」のことである。
2017.11.27