張貼日期:Mar 05, 2011 6:5:17 AM
いま、台湾大学構内の宿舎「鹿鳴雅舎」の一室でこれを書いている。
昨日までに講演と連続講義をどうにか終えることができた。今日はゆったりしたいと思い、遅くに目を覚ました。
テレビを点ける。どの局も、世界を駆けめぐっている「新型インフルエンザ」のニュースで喧しい。 WHOは警戒レベルをフェーズ5に引き上げたそうである。
窓の外に目をやる。木々の緑が光り輝いて目にまぶしい。その下を若者たちが闊歩している。
テレビでの喧騒とキャンパスでの静寂の落差が気になる。
講義では、「母語、母方言とアイデンティティ」をめぐっての話をした。台湾大学の前身である台北帝大のことや光復後(戦後)の台湾の言語計画史などについても話したかったが時間切れとなった。
多くの若者にとって、かつての閩南語(台湾語)抑圧の歴史など、すでに体感できなくなっているようである。
母語は北京語(華語)であるが、大きくなってから台湾語を勉強した、という閩南系の学生がいた。母国語の再確認として意志的に学習する気持ちになったのか、と聞くと、当時の先生が強く指導したので、その先生のメンツをたてるためであった、という答えが返ってきた。
しかし、もちろん一方には、家庭内では昔からずっと台湾語で生活してきた、台湾語があくまで自分の母語である、と主張する学生もいる。
いずれにしても、若い人々の、過去に拘泥しない颯爽とした表情を見るにつけ、この地におけるヌーベルバーグを改めて強く感じるのである。
2009.5.1