2019年  追悼

張貼日期:Dec 22, 2019 11:6:33 PM

心友、藤田保幸君が逝って、四十九日が過ぎた。

やるせない気持ちが、いまだ癒えない。

阪大での直接的な教え子ではなかったのだが、彼の学生時代からずっと関わりを持ってきた。かつて、大学入試センターを会場としての、ある業務に彼を誘い込んで、一緒にその業務に携わったことがあった。

その頃の、業務が一段落した折の帰り道には、渋谷の「駒形どぜう渋谷店」で一献傾けることが常であった。

その後も、東京で会う機会があると、必ずその店で落ち合うことにしていた。彼とそこで最後に会食したのは、2018年の6月3日のことである。

その日、彼は、「癌の摘出手術をしました。胆管癌というやつです。でも治癒したようで、医師に、『もう飲んでもいいか』と聞いたところ、『大丈夫でしょう』と言うので、今日は思い切りやります。」と言った。

私は、少しばかり不安ながらも、付き合ったのであった。

それからちょうど1年後の2019年6月28日、彼から直接に連絡が入った。「今、病院からです。医師が、『余命はあと1年…』と言いました。でも1年間もあるので、(心筋梗塞で)あっという間に亡くなった徳川先生より幸せです。これから、本を2冊くらいは出したいと思います。渋谷のお店に行って、今までのお礼もしてきたいですし…」と。

返すべきことばを失った。

彼はそのことばの通り、著作2冊をまとめ上げた。『複合助詞の研究』(2019,9,30 和泉書院)と『「素浪人旅模様」から(抄)』(2019,9,30 私家版)である。前者は、複合助詞についての彼の論攷の集大成であり、後者は、彼が構想していた、いくつかの戯作のうちの1本を文章化したものである。治療中の辛さなど微塵にも表さずに書き続けた勁い精神に敬服するばかりである。

この2冊は、和泉書院気付の住所から届けていただいた。和泉書院社長の廣橋研三さんが、彼の委託を受け、各所への連絡を執り行ってくださっていた由である。そして、2019年11月2日、彼は逝った(享年60)。廣橋さんは4日に行われた葬儀一式をもお世話してくださった(その日、私は海外出張中の身で参列することが叶わなかったが)。廣橋さんの厚情に心から感謝している。

昨夜、彼のお気に入りだった渋谷のお店で、かつてセンターでの業務に携わった先生方とともに、ささやかな「偲ぶ会」を催したところである。

(2019.12.23)