2009年 文月

張貼日期:Mar 05, 2011 6:6:42 AM

この4月から奈良大学に勤めている。文学部国文学科の一員として、「国語学」を講じている。なんだか昔に戻ったような気分である。

家からの距離は5km、車だと10分で到着する。3月まで片道2時間近くの道のりを27年間も阪大に通い続けたことを思うと、この至近距離は不思議なくらいである。

家のすぐそばを流れる秋篠川に沿った遊歩道に桜の木が一列に植えられている。その遊歩道をまっすぐ進めば40分で大学の麓近くに到着する。満開時に桜のもとを歩いた折の爽快な気分が忘れられない。

大学の「麓」と書いたが、その住所は山陵(みささぎ)町、まさに青山の、その森のなかに校舎はある。研究室から若草山や東大寺大仏殿の甍がみえる。

「奈良で学ぶ贅沢」という大学のキャッチフレーズも誇大広告ではないように思われる。

学生たちの出身地を聞いて驚いた。西日本を中心としてではあるが、ほぼ全国にわたっている。地元の出身者が少ないのである。その点、阪大よりもバラエティに富んでいる。最初、授業で関西のネオ方言のことを話したのだが、どうも乗りがよくないことが気になっていた。しばらくして彼らの出身地を聞き、その理由が分かったのである。急遽、全国の方言を対象にして話をするよう、内容を変更するはめになった。

もっとも、高校で文学や古典に興味をいだいた関係でこの大学に入った学生が多いようなので、言語そのものの話には乗りにくいのかもしれない。だが、自分自身の日々のことばづかいを見つめることから研究が始まるのだということを話しつづけていきたいと思っている。

奈良大学の学生たちから受ける印象は、その礼儀正しさ、真面目さと情熱である。他の大学では見ることのできなくなった、かつての懐かしいものがここにはある。

2009.7.1