2005年 正月

張貼日期:Mar 05, 2011 5:28:57 AM

「タコタコあがれ、天まであがれ」と歌われ、正月の遊びの一つであった凧揚げの「たこ」の名称には各地にさまざまなバラエティがある。

国立国語研究所の『日本言語地図』には、百種近くもの表現形が載せられている。全国的に最も広い地域で使われるのは、もちろんタコである。タコはその形が<蛸>に似ているための名付けである。

関西を中心として分布するのが、イカ、イカノボリの類である。現在は勢力が弱くなっているが、分布の様相から、歴史的にはタコよりも新しい表現形であったと推測される。イカノボリは<烏賊>に似た<のぼり>という意味であろう。<のぼり>とは、祭りの時、神社の前に立てる細長い旗(「幟」)のことであるが、ハタ(岩手・長崎)、そしてタコバタ(青森・福岡)、テンバタ(宮城)、トーバタ(佐賀)なども<旗>に関連のある表現形である。このハタの類は、東北と九州とに離れて分布していることが注目される。多分古いものなのであろう。

九州の熊本周辺でタツというが、これは<竜>になぞらえた命名かと思われる。沖縄の宮古島ではカビトゥリというが、これは<紙鳥>に対応するものであり、漢語の<紙鳶>と同様の発想でおもしろい。

一方、ヨーズという表現形がある。これは、山口県と広島県と山口県、そして島根県の石見地方にまとまって分布しているが語源は不詳である。ちなみに、石見地方では、妻に隠れて外で酒を飲み、家では飲まない男を、(もっぱら外で揚がるところから「凧」に引っかけて)ヨーズダコと称する。

2005.1.8