張貼日期:Nov 30, 2020 1:38:15 AM
コロナ禍の拡大にほぼ応じて身体にさまざまな変調が生起し、倦怠感も増して、床に臥せる日が続いた。鬼の霍乱などと言われそうだが、医師に言わせると自律神経の乱れに伴う身体疾患とのことで、しばらく入院するはめになった。
「苛(いら)ち」は生来であるが、それに輪をかけて、このところ確かに走り過ぎたように思う。ミドルオールドを控えて、ゆっくりのんびりのはずではなかったのか、との反省しきりである。
病床で臥せっている間、なぜだか、何度も「ここに地果て、海始まる」ということばが脳裏をよぎった。「ここに地果て、海始まる」は、ポルトガルの詩人、カモンイスの表現だったか。
うつらうつらしながらの夢の中に、かつて訪れたポルトガルのシントラの風景が現れてきた。英国の詩人、バイロンが「この世のエデンの園」とまで讃えた美しき森の街、シントラが。
目が覚めて、ユーラシア大陸の最西端であるロカ岬を訪ねたのがいつだったか、病棟に持ってきた日記帳を繰ってみた。
それは、2002年12月22日のことであった。
雲一つない晴天ではあったが、強い風が吹いていて寒かった。その風に抗しつつ断崖に立ち、海を眺めた。青い空と絶え間なく打ち寄せる大西洋の白波のコントラストが鮮やかであった。視界いっぱいに広がる水平線。その水平線を超えて世界へと旅立っていった、かつての人々の意気込みに思いを馳せたのであった。
そんなことなども蘇ってきた。
やっぱりもう少し走ってみよう、無理のない速度で、と自分に言い聞かせ立ち上がったが、季節はすでに夏から冬へと移っていた。
2020.12.1