2007年 正月

張貼日期:Mar 05, 2011 5:44:28 AM

戦前には、新年を迎えると、みんなが一つずつトシをとった。その共通の体験は、人々の間に共通の意識を生みやすい。みんなが一緒にトシをとることで、正月の気分を共有することができたわけである。

トシをとるということは、昨日までとは違う、新しい自分に生まれ変わることである。正月に一つトシをとることで、戦前の人々はピリッとした緊張感を覚えたはずである。それとくらべ、数え年でトシを数えることの無くなった私たちの正月は、いちじるしく緊張感を欠くものとなってしまった。

ところで、トシという語には本来「穀物の実り」という意味が含まれていた。たとえば、『新勅撰和歌集』の冬の部に撰ばれている、

あらはれてとしあるみ世のしるしにや野にも山にも積もるしらゆき

という歌における「としある」という表現は、稲がよく実る、豊年である、といった意味に解釈できるのである。

このように、穀物、特に稲の一回実る期間がまさに一年に相当するというところから、トシという語が「年」そのものを表すようになってきたのだと考えられる。

2007.1.1