2015年 Ophelia

張貼日期:Mar 31, 2015 1:59:7 PM

NHK BSプレミアムで、「女優・満島ひかり まだ見ぬ世界への挑戦」という番組を見た。いま話題の女優・満島ひかりさんの素顔と、彼女がオフィーリア役として出演する蜷川幸雄80周年記念作品のニナガワ×シェイクスピア レジェンド第2弾『ハムレット』における1か月に及ぶ舞台稽古に密着して、その役作りの葛藤、そして彼女なりの新境地を開いていく過程を長期取材によって追いかけた番組であった。

ちなみに、ここでの彼女の役作りの新境地とは、蜷川の見地からの演技指導を受け、それに感化して開花しつつあるもののことであって、それはもちろんシェイクスピアが描いたオフィーリアの本質に近づくということではない。

『ハムレット』におけるオフィーリアの存在については、河合祥一郎さんが『NHK100分de名著』(NHK出版)のなかで、次のように述べている。

オフィーリア(Ophelia)という名前の頭文字Oは0(ゼロ)を表しており、空白である、という解釈があります。ゼロはそれだけでは何も意味せず、何か他の数字と結びついて初めて存在することができるので、父や兄や恋人といった男性と結びつくことで、初めて社会的な存在理由が与えられるというのです。オフィーリアは常に受け入れる側であって、自分から何かするという能動的な発動権を与えられていない。常に「ああしろ」「こうしろ」と男性から言われている受動的な存在として描かれているのです。

また、ゼロには性的な意味もあります。(中略)

オフィーリア いえ、何でもありません、殿下(I think nothing, my lord)。

ハムレット それはまた、乙女の股にふさわしい考えだね(That’s a fair thought to lie between maids’legs)。

オフィーリア 何がですか、殿下(What is, my lord?)。

ハムレット ナニがありませんって言ったろ(No-thing)。

オフィーリアの言ったnothingという言葉を、ハムレットは、あるべきものがない(no-thing)と読み替えて、脚のあいだに何もないのは乙女にふさわしいとふざけているのです。これは明らかに女性蔑視的な文化からくる発想ですが、「乙女の股」(between maids’legs)にあるのはnothingでありつまりはゼロということで、Oの形を女性器の象徴とするのは、当時はよく見られる表現でした。

2015.4.1