張貼日期:May 31, 2014 12:14:31 AM
講義で「言語権」について触れることがある。
言語権とは自らの言語、特に母語(・母方言)を自由に用いる権利のこと。その権利保障の対象主体とされるのは、一般に、社会における主流派言語以外の言語の話者(・話者集団)であり、国にその保障のための施策が課せられる。
かつて、授業で言語権の是非についてのアンケート調査をしたことがある(2008~2009年度)。実施したのは、東京大学、大阪大学、奈良大学、金城学院大学、大阪YWCA専門学校の5校。
その結果、全体的には、言語権を「大切だ」「必要だ」「守るべきだ」として<認める>者は66%で、「意味がない」「必要ない」として<認めない>者は11%であった。
その内訳で対照的だったのは、YWCAと東大で、YWCAでは<認める>97%、<認めない>3%と、圧倒的に<認める>派が多かったのに対し、東大では<認める>38%、<認めない>34%、<ノーコメント>28%と、両派が均衡していた。しかも、東大では、<認める>派においても、「時間や負担がかかる」「実際には無理だ」とするものが67%を占めていた。東大生は、現実をよりシビアに見ていることが分かる。
ちなみに、わが奈良大学での2009年度の調査では、「言語権について初めて知った」37%で、<認める>派63%、<認めない>派9%であった。
ところが、である。それから5年が経過して、今年度、改めて奈良大生に同じアンケートをした結果は、「言語権について初めて知った」76%、かつ<認める>派89%、<認めない>派0%となった。
「初めて知った」という者が逆に増えていることがショックなのだが、より残念なのは、課題と対峙しつつ真剣に考える、といった態度がやや希薄になっていると感じられる点である。心根は優しいのだが社会問題には無関心、といった学生が最近とみに目立つようになってきた、ように思う。
2014.6.1