2016年 赤目四十八滝

張貼日期:Jul 07, 2016 12:17:52 AM

三重県の名張市にある赤目四十八滝渓谷を巡った。

四十八滝という名の滝群は全国各地に存在する。仙台市の鳳鳴四十八滝、日光市の日光四十八滝、高山市の宇津江四十八滝、熊本県上益城郡の矢部四十八滝などである。四十八は「いろは歌」に因んだもので、一連の滝がまとまっている状況を指してのメタファーであろう。

地名「赤目」は、修験道の開祖・役小角(えんのおづの)が、この渓谷での修行中に赤い目の牛に乗った不動明王に出会ったとする言い伝えに由来するとのこと。その不動明王に因む「不動滝」に参拝者が多いようである。しかし、私には千手観音に因む「千手滝」が清冽で、もっとも印象に残った。

かつて、映画「赤目四十八瀧心中未遂」を見たが、それ以来、赤目四十八滝渓谷は是非とも訪れておきたいと思っていた場所であった。このたびようやくその願いを叶えたわけである。

ちなみに、この映画は、昨年亡くなった車谷長吉の長編小説をもとに製作されたもので、生きる目的を失った男(主人公)が、大阪・尼崎に流れ着き、そこでの底辺生活のなか、ある女性と運命的な出会いをし、その女性に誘われて死出の旅路へと向かうといった流れが濃密に描かれていた。

そこでの妖艶な映像世界が強く心に残っている。特に、映画初主演であった寺島しのぶさんの、男性を惑わすような妖しい美しさが、周囲の俗的空間と相乗して、ひときわ目立っていた。

そういえば、知己の鷲田清一さんが、この映画に関して、いつぞや(酒席であったか)、「あの男(主人公)は若い頃の自分そのものだ」と述懐していたことなども思い出されてきた。

2016.7.7