張貼日期:Mar 05, 2011 5:47:5 AM
米原万里さんが逝って、1年と1週間が過ぎた。
彼女のその体験を生かしたユーモアあふれる辛口のエッセイ、歯切れのいい爽快な批判精神にはいつも秘かに感じ入っていたものである。
米原さんは父君の仕事の関係で、少女時代をチェコのプラハで過ごし、現地のソビエト学校でロシア語を5年間学んだ。この体験が後に作家となるための決定的なものになったのだという。そして帰国後の、いわゆる帰国子女につきもののカルチャーショック、日本社会への違和感が彼女の批判精神を育んだのだともいう。その外国人用ロシア語学校での同級生たちのその後の数奇な運命を追った『嘘つきアーニャのまっ赤な真実』を読んだときの強い印象はいまも私の心のなかにある。
直接に話したこともない作家の死に対して、あんなにも激しいショックを受けたのは何故なのだろう。そのことの理由が自分でもはっきりとは説明できない。
彼女の、「口が悪い」とさえ評されるようなその大胆な言辞の内側に、繊細さと気遣い、そして優しさが溢れていることを私は捉えていた。私は、そのような彼女が好きだったのだと思う。
享年56歳、あまりにも早い。
2007.6.1