「尋常性乾癬症手記」

54歳男性2010年6月1日

私の尋常性乾癬症体験記

大学を卒業して6年くらいたった頃、右耳タブの裏の付け根あたりが少し盛り上がり赤くなった。薄い紙のように一日数回、皮膚がめくれてきた。

しばらくすると左耳の同じ場所に発生。

近所の皮膚科で診断を受けると、「尋常性乾癬症」という生まれて初めて聞く病名を告げられた。欧米人に多い病気で、近年、日本人も増えてきて食生活の欧米化が原因と言われているが、完治が困難な難病で、一生涯うまくつきあっていくしかないが、命に関わる病気では無いと告げられた。

ステロイドの軟膏をを処方され塗ったが全く改善されず、むしろ患部は広がるばかりで不安感が高まっていった。また、ステロイドを塗ることにも漠然とした抵抗感があった。

しかしながら髪の毛の生え際、頭の中、鎖骨、肋骨の下部、ズボンのベルト下、膝下、太ももと患部は拡大してゆき、発病後3年くらいで全身の皮膚の1/3程度まで広がった。

かゆみがひどく、常にどこかを掻いている状態。掻くと皮膚が掻き取られ。

家ではフローリングの床が、皮膚で白く粉を拭いた状態になり掃除機を頻繁にかけなければならなかった。風呂にはいると体が温まるため、かゆみが増す。

湯船の中で掻くと水面に脱落した皮膚が湯垢のように浮いて真っ白になり、湯が汚れ家族が入れないほどであった。この病気は不思議と、人目にさらされる部分、たとえば、顔や手のひらには症状が出なかった。

紫外線を浴びている部分には出にくいらしく、第二次世界大戦中に東南アジアの欧米人捕虜が、屋外での作業により症状が改善されたという記録もあるそうだ。会社では健康診断、ゴルフで風呂に入る時、人目が気になり困った。

夏でも半そでシャツは着れなかった。伝染する病気ではないのだが、人から奇異に思われるのが不安であった。家内がある日、高槻の関西医科大学の皮膚科が良いと聞きつけてきて、診察を受けたところ、すぐに入院。

チガソンというビタミンAの誘導体を服用し、患部に紫外線吸収剤を塗って紫外線を浴びる治療を受けた。チガソンは催奇形性があるということで、治療中は子供をつくることはできない旨、同意書にサインする必要があった。困ったのはチガソンの副作用。唇がひび割れて出血と痛みがきつく、また見た目もひどく人目が気になった。髪の毛が薄くなり目が充血。肝臓への負担があるとのことで、頻繁に血液検査を受けた。チガソン服用で内臓の他の病気になるのではないかと不安にかられた。2週間の入院期間中にある程度の改善はみられたが、

完治には程遠い状況で退院。週に一回のペースで通院し同じ治療を続けたが、悪化を防ぐ程度で改善はしなかった。

退院から半年経った頃、主治医が最近出たという免疫抑制剤を服用してみないかと言われ、副作用で困っていたので薬を切り替えることにした。その効果は抜群で、飲んで半日もしないうちに皮膚の盛り上がり感が無くなり、かゆみも軽減された。一か月程度で体中にあった病変が消えたのには驚いた。しかし、薬をやめるとすぐにかゆみと病変が現れ、服用をやめることはできなかった。ある日、新しい主治医がサンジュミンを飲み続けるのは良くないと言いだした。

何を根拠に言っているのかちゃんとした説明はなかったが、非常に不安になった。結局、転院し以後20年間服用し続けることになった。

50歳位になった頃、薬の効き目がだんだん落ちてきて、同量飲んでも以前ほど効かなくなってきた。何か新しい治療法はないかと探していた時、

松本漢方クリニックに出会った。2008年5月、初めて松本漢方クリニックを訪問した。診察室に入ると、「絶対に治ります。信じて任せなさい」と自信たっぷりな口調で言われたが、20年以上この病気と付き合ってきて、簡単に信じることはできなかった。

漢方薬の入浴剤とせんじ薬、赤い軟膏、風呂に入る前に皮膚を殺菌するヨード液を受けとった。せんじ薬は1時間程度せんじて500cc位を一日かけて毎日飲んだ。風呂は入浴剤を煮出してできるだけ毎日入った。Weekdayは仕事で遅くなることが多かったので1時間程度、週末は土日ともに3時間は入浴した。

初めの一月間、免疫抑制剤の量を半減しその後服用をやめた。服用をやめてからリバウンドし病変が増えていった。漢方入浴剤の風呂に入浴すると皮膚が大量に剥がれていった。治療開始して2月ぐらい経つと、脚の付け根のリンパ節が卵大に腫れているのに気づいた。肩こりもひどく、首のリンパ節も腫れていた。不眠、耳鳴り、患部の痛み、出血、思考力の低下といったことに悩まされたが、それ以上に困ったのは、真夏にクーラーのある部屋に入ると寒くてたまらず、冷凍庫に入っているような感じだった。皮膚が薄くなり寒さを感じやすくなったようだ。

腕や足の毛も皮膚とともに抜けてしまった。皮膚が入浴剤に染まり茶褐色になり、下着やYシャツの首部分が茶色に染まり洗濯しても落ちず、プラスチック製の浴槽も入浴剤に染まった。体重は84kgあったのが76kgまで落ち、

顔がガサガサで粉をふいたようになった。

治療開始3月~6月位が一番苦しい時期で、それを超えると皮膚の状態が少し改善されてきたのが実感でき、入浴するにも前向きな気持ちでやれるようになった。

長時間の入浴はつらいので、湯温を39度程度落とし、雑誌や防水テレビ、時にはパソコンを持ち込んでDVDの映画を見て気を紛らせた。

治療期間中、お酒も辛い物も全く制限しなかった。食事制限をしなくてよかったのは、治療のストレス緩和には役立った。

治療期間は1年半で、最終的に体の病変は全くなくなった。

現在、治療をやめて半年以上になるが、さしたるリバウンドも無く安定している。いずれにしても、長期にわたって悩まされてきた乾癬から解放され、松本医師には心から感謝しています。

診察のたびに励ましていただいたのも心の支えになりました。

治療は面倒でまたつらい経験でしたが、完治した開放感と免疫抑制剤に頼らない安心感を考えると、

松本医師を信じて治療を続け、本当に良かったと思います。

この体験記が、同じ乾癬症で苦しんでいる方の参考になれば幸いです。