「花粉症に関する回想と治療の経過報告」

33歳2017年1月19日

今思えば、症状は小学生の頃から出ていたのかもしれない。当時は「ただ鼻水が出る」程度の認識でトレーナーの袖で拭っていた記憶がある。自分が「花粉症」かもしれないと認識したのは中学校に入ってからだ。鼻詰まり、鼻水がつらくなってきたので近所の耳鼻科へ行った。診察の結果は軽度の花粉症。錠剤を処方され、それを飲んで過ごすという生活が始まった。飲めば症状はとりあえず治まるので何の疑問も持たず、治っているという認識だった。根本的に治しているのではなく、ただ抑えているに過ぎないといった考えはなかった。また、花粉症は今でこそ国民病とまで呼ばれるようになり、シーズンになればTVでも特集されているが、当時はそこまで騒がれていなかった気がする。ネットも普及していなかったので花粉症について調べるという事も考えなかった。唯一通っていた耳鼻科がステロイド注射を使わなかったという点はよかったのかもしれない。

やがて、処方された薬を飲めば症状は一旦治まるものの、だんだんと薬の効きは悪くなっていった。かなり酷くなったのは高校受験を控えた頃だった。ちょうど花粉が飛び始める時期と重なり厳しかった。この頃になると錠剤に加えて点鼻薬も使用していた。受験中は1科目受けては、トイレに行って点鼻薬を使い、また次の科目をこなしてトイレへ行くという有様だった。抑えるには他に手がなかったので、それを続けるしかなかった。

高校へ入学後、近所の別の病院へ行って血液検査を受けた時には基準値を大きく超える数値が出た。担当の医師から「これはつらいね・・・。」と言われたのを覚えている。ひどくなる一方だったのだ。特に理由もなくマスクをつけていても違和感のない今と違い、マスクをつけていれば体調不良、風邪だと思われてしまうので、シーズン中、高校の授業ではではハンカチを鼻、口元に当てながら授業を受けるという日々が続いた。

身体を動かせば(温まると)鼻が通りやすくなるので学校では体育の授業、家では風呂の時間が唯一緩和される時間だった。また、横になっていれば片方の鼻が通るので少しは楽になることから、家に帰ればベッドに可能な限り横になる生活。高校生活における花粉シーズンはそんな感じだった。良くなる傾向はない。薬の効きも悪くなる。錠剤や点鼻薬を使っても1日持たなくなってくると、シーズン前から気持ちが滅入る。そして、高校3年の頃には薬を飲もうが点鼻薬を打とうが大して症状に変わりがなくなってきていたので、薬もやめて、ただ花粉シーズンを耐え忍ぶという感じになっていた。単純にもう意味のない薬の摂取は避けようという判断だった。

錠剤、点鼻薬を使うのをやめたものの、代わりの対策があるわけではないので「これが一生続くのか」と思うと恐ろしく、根本的に治す方法を調べ始めた。この頃にはTVでは花粉症が特集されることも増えており、所謂民間療法で体質改善みたいなものもよく目にするようになっていたが、自分に合うものがそう簡単に見つかるものではなかった。ヨーグルト、なんとか茶を飲めば治る等も一応試したものもあったが、あまり効果はなかった。民間療法が悪いとは思わないが、絶対数が少ない民間療法を試すのは賭けに近いものがあり、厳しいと感じた。ネットで情報を得るようになるとさらに真偽も確かめづらい。TVでタレントが「花粉症がひどい時は頭痛もあって起きられない」、「綿を鼻に詰めて働いている」という話をしているのを見てツライのは自分だけではないのだと自分に言い聞かせる日々。レーザーで鼻の粘膜を焼けばワンシーズンは乗り切れるという情報もあったが、結局はその場しのぎ、身体にいいものではなさそうだし、金銭的にも気軽に出来るものではなかった。

「もう無理かな」と思い始めていたある日、ネットのとある掲示板の花粉症に関するスレッドで「松本漢方クリニック」を目にすることになる。そこには「完治した」と書いている人が何人もいた。賛否の意見が書かれていたのは事実だが、ただ症状を抑えているのではなく「治った」「もう通っていない」と書いてあった。

・まず民間療法ではなく、病院であること。

・シーズン中だけ抑えられているのではなく、完治したという人がいること。

・遠方からも患者が通っているという事実。

「見つけた」という気持ちと同時に「これでムリだったらたぶんもう終わりだ」と思った。

松本漢方クリニックのサイトを調べ、アレルギーや、花粉症に関する記述を読んだ。「ああ、そりゃ治らないわけだ」と合点がいった。そもそもスギというのは遥か昔から日本に多く分布しているし、少なくとも一般人より花粉を吸っているはずの林業の人でも全員花粉症で苦しみ続けているわけではないのは何故か、という長年の疑問も同時に解消される内容だった。やはり、スギ花粉自体は悪ではなかった。また、無理に抑えるのではなく、異物(結果的に花粉ではなく化学物質だったわけだが)との戦いに敗北することでアレルギー反応は終息するというのも目からウロコだった。

花粉が出ないスギへの品種改良が進んでいるというニュースも見かけていたが、それでも全部抑えるなんてムリだろ・・・と思っていたので、「無限の異物に対して有限の武器で対処しきれるわけがない、負ければいい」という事が医師からの情報として提供されているのは朗報だった。また、点鼻薬等を使った治療(と言っていいのかわからないが)をしてきた期間により治るまでに時間が変わるという事も書かれており、今までやってきたのは何だったのかと思ったが覚悟もできた。

松本漢方クリニックを訪れ初対面した松本先生からは「絶対に治してあげる」という言葉と共に握手をしていただいた。この言葉は大きかった。思い起こせば花粉症に対して「症状が抑えられる」「マシになる」「今シーズンは大丈夫」という類の言葉は受けてきたが、はっきり「治る・治す」という言葉を使ってくださる医師はいなかった。

漢方を煎じて飲む日々が始まった。ちなみに、松本漢方クリニックを見つけるきっかけとなった掲示板には「煎じ薬が面倒で・・・」と書いてあるのも見かけたが、症状に悩み続けるのに比べれば数億倍マシ。なんということはない。さらに、今までの経緯から治るまでには時間がかかると覚悟していたが、飲み始めてしばらくすると症状に明らかに改善が見られた。完全ではないにしろ、あれだけ詰まっていた鼻が通る日が少しずつ出てきた。シーズン中は基本的に詰まっているものだったので驚いた。漢方って効くまでに時間がかかるものという妙なイメージがあったのでそれも覆った。翌年の血液検査の結果ではスギに対する数値が下がっていた。これも大きな変化だった。過去、シーズン中に薬を飲めば、症状自体は抑えられるが、翌年の血液検査では数値は寧ろ上っていた。つまり根本的な治療は出来ていなかった。

松本漢方クリニックサイト内の花粉症に関する部分に「花粉症に関しては手記が少なく、書くとすれば“松本漢方クリニックに来た。漢方煎剤を飲んだ。症状がすぐに取れた”となる」という記述があるが、まさにこれが事実だと思う。シーズン前から煎じ薬を飲み始めればシーズン中に特にひどい症状は出ない。それをシーズン終了後しばらくまで続ける。翌年、シーズン前に検査をすれば緩やかではあるが数値が下がっている。通い始めてから現在に至るまでの数年の経過はこれの繰り返し。私の場合は、今まで過剰な薬や点鼻薬の使用もあって期間が長いが、そうではない人はもっと早いスパンで治療を終えるのだろう。花粉症に悩んでいる人には妙なスパイラルに巻き込まれる前に早めに移行を勧めたい。

私もいずれ自然に敗北し、戦いが終わるまで続けていきたいと思う。