かれ斬りたまへる刀(たち)の名は天の尾羽張(おはばり)といひ、またの名は伊都(いつ)の尾羽張といふ。
迦具土の神の頚(くび)を十拳剣で斬り、斬る主体である伊耶那岐の命の側に建御雷の男の神という人間精神理想の構造原理が自覚され、また斬られた客体側に神代表音文字の八種の構成原理が発見されました。尾羽張(おはばり)とは鳥の尾羽が末広がりになる姿で、この十拳剣を活用すれば人間社会の文明は彌栄(いやさか)に発展する事が可能となります。その為にこの十拳剣の判断力(分析・総合)に天の尾羽張り、またの名伊都の尾羽張の名が付けられのであります。天(あめ)とは先天または天与の意であり、伊都(いつ)とは御稜威(みいず)の意であります。御稜威とは力または権威という事です。
この尾羽張の剣の判断力の活用は古来全世界の神話・宗教書に書かれました。ギリシア神話にオリオン星座(Orion, Oharion)が取上げられています。この星座の十字形が時間と空間を縦横に斬る十拳剣の分析と総合の人間天与の判断力の活用の象徴として説かれています。また旧約聖書のヨブ記に同様の記述があります。「ヱホバ大風の中よりヨブに答えて宣(のた)まはく、……なんじ昴宿[ぼうしゅく](スバル星)の鏈索(くさり)を結び得るや。参宿[さんじゅく](オリオン)の繋縄(つなぎ)を解き得るや。なんじ十二宮をその時にしたがひて引いだし得るや。また北斗とその子星を導き得るや。……」私は初めてこの聖書の文章に出合った時、宗教で謂う救世主(ヨブはイエス・キリスト以前のキリストと呼ばれます)は記述の如き超能力の持主なのか、と思ったものでした。言霊布斗麻邇の学に出合うに及び、この様な神話や宗教書の中の文章がすべて太古に世界に流布されていた言霊学の心と言葉の原理に基づく記述であることを知り、神と人間との関係という問題を解決する事が出来のであります。