再び父韻について。
主体と客体を結び付けて現象を生む人間知性の原律である父韻には八つの種類 キシチニヒミイリ があることを先にお話質した。この知性の原律とはどのようなものなのでしょうか。八父韻は二つずつ組み合わさって陰陽または正反をなし、それが四組あります。チイ・キミ・シリ・ヒニ であります。
しからばそれぞれはどんな動きをするのでしょう。実はこれを表現し理解していただくことは非常に困難なことなのです。なぜなら父韻の原律とは人間の心の最も深いところで創造意志が四つの母音に働きかける一瞬の力動なのですから。本当に理解し体験するには、自分自身の心の中で、実体験で、確認するより方法はないわけです。そうはいっても何も参考になることがなくてただ把握せよといっても無理ですから、参考例を次ぎに掲げて置きましょう。
チ 精神宇宙全体がそのまま現象発現に向かって動きだす端緒の力動韻
イ 動きだした力動が持続する韻
キ ミとは反対に体験内容を自我の方向に?き寄せようとする力動韻
ミ 精神宇宙の中に己にある自己の体験内容に思いが結びつこうとする力動韻
シ 精神宇宙にある精神内容が螺旋形の中心に静まり収まる力動韻
リ シとは反対に、ある精神内容が宇宙の拡がりに向かって螺旋状に発展拡大していく力動韻
ヒ 精神内容表現が精神宇宙の表面に完成する韻
ニ その反対に、事物の現象の種が精神宇宙の中核に煮詰まり成る韻
さらにこの八つの父韻について参考にしていただくために、私の言語学の師であった小笠原孝次氏ならびにまたその師であった山腰明将氏(共に故人)の八父韻説明を付け加えておきましょう。
小笠原氏 山腰氏
チ 創造 陽出力
イ 繁栄 飛至力
キ 収納 陰搔力
ミ 整理 旋回力
シ 調和 透指力
リ 滲透 螺婁力
ヒ 開顕 開発力
ニ 成熟 吸引力
以上八父韻それぞれについて説明を加えましたが、どれをとってもやはり概念的説明に留まってしまいます。
これ以上の立ち入った説明は、どうしたら言霊の理解を深め、体得することができるのかの方法を申し上げるところで詳しくお話することにしましょう。