投稿日: May 17, 2018 10:17:52 AM
どの仕事も尊いものですが、特に専門性が高いといわれている仕事にはいくつかの特徴があります。例えば、人の命に携わる仕事であること、自らの責任で判断をくだせねばならないこと、独自の専門知識や技術、その実践力があり、誰にでもできる仕事ではないということ。それゆえに、養成や研修が必要とされていることなどです。
保育者はその意味で、命を守る大切な仕事で、かつ、自らの責任でその都度判断を下さねばならい高度な仕事であるといえます。保育者は高度な専門職であり、園長や主任などの先生方には是非、高度な専門職であるという自負を自らもそして、スタッフにも育んで欲しいと強く願っています。
一般的に専門職には、その要件として、以下が確立されていることがあげられています。
①養成教育システム
②現職教育システム
③倫理規定
④資格
⑤社会的威信
⑥報酬
⑦職歴パターン
⑧市場独占
保育者についてこれらの要件について考えてみましょう。
①養成教育は国家資格や教員免許としてシステムが確立しています。
②現職研修システムは、これまで現場によって熱心になされていましたがシステム化が進んでいませんでした。現在まさにここが改革されているところといえるでしょう。
③倫理規定はあります。
④資格については、法定化がなされています。今後、保育士についても、尽力して学び続けてこられている方に、任すことのできる仕事と関連させて、一種、二種、専修といった階層化を図ることが必要でしょう。また、時代により子どもや社会も代わり、保育に関わる研究成果もどんどん出てきているので、また、それをキャッチアップするための研修が実際にはなされているので、やはり実際に学んだ人については資格の更新制度の導入を考える必要があると思われます。
⑤社会的威信については、乳幼児期の教育の必要性や期待は高いものの、その重要性や独自性、つまり、保育は誰にでもできる仕事ではないといった見解からの威信が高いかどうかは、まだまだ不明瞭な点があるように思います。
⑥報酬については、公立幼稚園は小学校教諭と同等扱いのところがもともと多く、現在それが下がって来ているところもあります。また公立保育所の保育士については公務員と同等の扱いですが、実態としては年齢層が低いこともあり、職種別平均給与が低い状態にあります。これをより高い方の基準に向上させることが今後の課題として位置づけられ、それに関わる制度改革が進められています。
⑦職歴パターンについては、これまでは単純でしたが、キャリアパス等の開発も進んでおり、キャリアラダーのイメージがより描きやすくなるようにといった努力が進められています。
⑧市場独占については、保育士も幼稚園教諭も名称が独占で、市場の拡大はこれからの課題でもあるといえるでしょう。例えば、担任は正規採用でかつ有資格者でなければ出来ない、などの業務独占・市場独占が今後整備されていくように思います。幼稚園教諭免や保育士資格を持っていてかつ、相談業務にかかわる資格を有しているといったことや、研修により他の専門領域、例えば、病児保育、子育て支援、食育(栄養)、といったものを加えていくことも今後想定されていくと思います。なお、あくまでもこれらは他職種の専門性についての情報を加味したものなので、真の意味での保育のスペシャリストは、研修を通じて、保育士や幼稚園教諭の資格を基礎資格や免許として持ち、かつ、子どもの発達についての知見を深め、5領域についての理解を高め、保育の知識と技術、実践力(判断力や応用力)を向上させていくことが望まれると思います
研修は、他者から課されてさせられるもの、与えられるもの、ではなく、専門職として大切なものであり、業務であるということへの認識を高めていくことが、保育実践の質の維持と向上に不可欠であると考えます。この認識を高めることには、まず、園のリーダーこそが、研修をし、自ら学び続けこの仕事の重要性を自覚し、スタッフへの共通認識を高め、また社会にも発信して欲しいと願っています。
兵庫県では、新しい試みとして、平成28年度より、幼保連携型認定こども園の園長研修と主幹保育教諭研修の内容を、兵庫県幼稚園関係者、保育所関係者が、公私園種を越えて一体となって一緒に考えました。この研修の認定は、知事が行うというシステムが構築されました(詳細は保育ナビ2017年4月号等に紹介されています。)。
国では、2017年度から、保育士の処遇改善を研修と関連させて進めていくことなりました。これが保育界全体へ広がっていくことが期待されます。保育者の先生方の研修は保育実践力の向上の鍵であると思います。その研修は、自助努力から、園長等リーダーのイニシアチブによる育ちあう集団づくりへ、さらには、制度づくりへと進んでいくことが今後ますます期待されます。
※本記事の内容は、特定非営利活動法人ちゃいるどネット大阪情報誌「ちゃいるどネットOSAKA」に掲載されたものを許可を得て転載しています。
(執筆者:北野幸子 2018年3月26日)