投稿日: Sep 19, 2016 6:2:35 AM
この本は子どもと関わっている人、これから関わろうと思っている人にとって、子どもの内面を理解する手掛かりとなる本です。
私は子どもの施設の心理職員として子どもたちと関わってきました。心理職員は来談者中心療法、行動療法、精神分析などの理論をもとに心理治療的関わりをしています。私も色々な方法で子どもの心のケアを行ってきたのですが、何年間も精神分析とは少し距離を置いて子どもの心理治療を行ってきました。それは精神分析が難しく、理解しにくいと私が思っていたからです。けれどもやっぱり精神分析をしっかり学ばなければいけないと思い直したときに出会ったのがこの本です。
この本はメラニー・クラインに始まるクライン派の理論をわかりやすくまとめてあります。母子の関係をもとに、人が早期に経験する内的世界の状況の妄想分裂ポジションや抑うつポジションのことや心を揺さぶる不安を和らげる防衛機制のことなどが書かれています。
対象関係論は施設の子どもへの心理治療だけでなく、保育所などで出会う気になる子どもたちについて理解するときにもとても役立ちます。私はときどき保育所や幼稚園を訪問し、子どもたちと数時間過ごした後に先生方とお話をします。そういったときに対象関係論をもとに子どもとの具体的な関わり方を一緒に考え、提案したりします。そのような話し合いをすると、保育園や幼稚園の先生方は、気になる子どもたちが表出してくれる様々な行動について腑に落ちることもしばしばあるようです。
この本の他にもクライン派の本はたくさん出版されています。それらの本を理解するためにもこの本は役立つと思います。
(紹介:吉村 譲,2015年8月20日)