Chapter 20 Aggression and Antisocial Behavior: A Developmental Perspective
Jean R. Séguin & Richard E. Tremblay
pp.507-526.
攻撃性が高く、反社会的とされる行動をいかに予防し、介入するか。本章では、攻撃性と反社会的行動に関連する発達的要因を理解することを重視し、これまでの反社会的行動研究を全体的かつ具体的に概観しています。
例えば、身体的攻撃は発達とともに減少することが明らかになっている一方で、攻撃性が高いままの子どもも少ない割合(5%)で報告されていること、女子は男子よりも身体的攻撃性が低いことなど、反社会的行動のタイプ別に発達と性差の特徴が整理されています。また、発達精神病理学から攻撃性に関連する遺伝子レベルの知見も紹介されています。
攻撃および反社会的な行為は防ぐ必要がある。その理由は、以下の3点である。
受け手に深刻な問題を引き起こすこと
コミュニティ内に恐怖と深刻化を招くこと
犯罪者はしばしば精神衛生上の問題を抱えていること
身体的攻撃、その他多くの反社会的行動の形態は、誕生後、最初の数年間で現れる。大抵の人々は、正規の学校制度の一員になるまでに自己制御することを学ぶのだが、実質的な少数の子どもたちはそうではない。彼らのこのような社会化の欠如は、しばしば成人に達しても重大な影響を及ぼす。
本章では、反社会的行動に関する研究を全体的にレビューするだけでなく、行為障害の亜型(サブタイプ)にも注目してみたい。実際、反社会的行動との間には共通点があるかもしれないが、必ずしも同じ発達的経過を辿り、相互に関連し合い、共に発達するというわけではない可能性もある。さらに、男女でも異なる現れ方をするかもしれない。我々が予防効果と矯正的な介入の効果を高めるには、これらの発達的要因に関してより良く理解することのみである。
キーワード:攻撃性(aggression),反社会的行動(antisocial behavior),行為障害(conduct disorder),縦断的研究(longitudinal studies),発達曲線(developmental trajectory),疫学(epidemiology),行動遺伝学(behavior genetics),併存疾患(comorbidity),予防(prevention)
子どもおよび青年にみられる反社会的行動には多くの形態がある。
反社会的行動の異なる形態は、発達曲線が異なる傾向がある。
反社会的行動の異なる形態は、共通因子だけでなく特有の危険因子も有する。
反社会的行動の様々な形態は、就学前期に発現する傾向がある。
就学前期における規則違反(rule breaking)、破壊行為(vandalism)、窃盗(theft)に関する発達曲線を調査した研究はほとんどない。
反社会的行動は、世代間で強く遺伝する。
遺伝的情報研究によって、遺伝、環境、およびその相互作用の重要な影響が明らかにされている。
反社会的行動に関する発達研究の大多数は、男性の行動に焦点を当ててきた。しかし、周産期および幼児期初期における反社会的行動の危険因子の多くは、母親の特性に関係している。
地域社会を基盤にした介入とは正反対の施設収容のようあな典型的な介入は、医原性効果がみられる傾向がある。
就学前期に開始する予防的介入は、世代間的観点からみて、もっとも効果的で経済的であるように思われる。
Table 20.1 行為障害(CD)および反抗挑戦性障害(ODD)のサブタイプの定義項目(p.509)
(発表担当者および発表日:堀越紀香/2014年11月)
(まとめ:伊藤理絵)