投稿日: Sep 19, 2016 2:29:16 AM
全3巻。特に最初のものが文章を書くコツに立ち入って読みがいがあります。第3巻になると次第に、書くことにより癒しを求める人への相談ということになってきて、それはそれで面白いけれど(心理学者としては興味がある)、でも、文章上達とは離れていっているように思います。その特徴は具体的なノウハウと書くことに関わる精神的態度が常につながっているという姿勢にあるようです。また、質問に答えるという形の中で相手の質問の背後にある甘さやつらさを汲み取る懇切さに感心します。「アホ」と私なら言いそうなところでも対応して、他の人に意味のあるものに変えていくあたりが読んでいてなるほどと思えるのです。
一つ著者の言いたいミソのあたりを引用しましょう。
ある出来事が起きたとき、「私」はそれを観察します。しかし、その出来事によって実は「私」の中にもそれに対応した変化が起きているのです。それが出来事の全体です。その二重の変化を観察し、描写する視点を得たときに、表現の可能性は無限大になるのです。
語り手、書く主体は、「私」を冷ややかに距離感を持って見つめられる一つの「視点」であるべきなのです。
人間の内面性、いわゆる「精神」にも物体のような実体性があると感じたり考えることがあるかどうかということです。
(紹介:無藤 隆,2014年12月15日)