投稿日: Sep 17, 2016 5:12:36 PM
ピーター・スピアー著
評論社
1984年6月5日初版刊行 / 2006年5月30日19刷刊行
この本は字のない絵本。
字がないので読み聞かせには向かないけれど、
子どもたちと描かれているストーリ-を一緒に楽しむことができる。
雨の日に、この本を手にして椅子にすわる。
あるいは、絨毯に腰をおろして、静かに絵本のページをめくる。
そうすると、子どもたちが自然に集まってくる。・・・そんな風に読むのにぴったり。
きょうだいが庭で遊んでいると、突然雨が降ってくる。
私の隣に座って聴いていた年中のさとくんは、
「あー、せんたくものがぬれちゃうよ」とびっくりして教えてくれる。
でも、絵本の中のこの子たちのお母さんは、あわてて洗濯物をとりこんだりしない。
笑顔で子どもたちを手招きし、かさやレインコートや長靴を子どもたちに用意してくれる。
そして、子どもたちはどしゃぶりの雨のなかへ。
雨が降ってきたときの土の匂い。
長靴に水がはいってぐちゃぐちゃと音がする感じ。
雨の音。
水が流れる様子。
わたしが子どもの頃は、まだ舗装されていない道があって、
雨が降ると、坂道を川のように水が流れた。
その中にわざと入って歩くのが好きだった。
…と、何十年も前のことを思い出しながら
今、わたしの目の前にいる子どもたちには、そんな空気がわかるだろうか?
わたしの勤務していた保育園では、傘は基本的に保護者が持ち帰ることになっているので
園生活の中では、雨降りの日に外で遊ぶことはほとんどない。
絵本の中の子どもたちは,雨の中でたっぷり遊んで家へ帰る。
家に帰るとお風呂がわいている。
そして、お母さんと子どもたちがお茶を飲みながら、話している様子が描かれている。
何気ない、日常のいちにち。
目の前の子どもたちは、
絵本の中の男の子のおしりがちょっと見えているところや、
ぬぎっぱなしの服を見て、ワイワイと楽しそう。
窓から外を見る子どもたちの様子。
子どもたちが見ることはない、静かな夜の庭の様子。
そんなところも描かれているところが好き。
雨とか、風とか、太陽の光とか・・様々な自然現象から、
子どもたちはいろんなことを感じとりながら生活している。
子どもと一緒に感じる力を
私はこういう絵本を通してゴシゴシみがいておきたいと思う。
(紹介:安井素子,2015年2月8日)
ピーター・スピアー
Peter Spier
世界的に有名なイラストレーター。オランダのアルステルダム生まれ。
海軍で兵役を終え、オランダの最有力雑誌の記者をつとめた後、1952年アメリカ合衆国に渡る。精力的な活動は百を上まわる作品を生み出しているが、そのどれもが、確かなデッサン力に支えられた詩情とユーモラスにあふれ、高い評価を得ている。
代表作に「きつねのとうさん ごちそうとった」(1962年コールデット・オナーブック)「ノアのはこ船」(1978年コールデコット賞)などがある(いずれも評論社刊)。