投稿日: Jun 14, 2018 8:40:38 PM
ウィリアム・スタイグ 文絵
うつみ まお 訳
評論社
1991年 第1刷発行
今月4日はムシ歯予防デーですので、歯医者さんのお話を紹介します。原題はDOCTOR DE
SOTO、SOTOはスペイン語で雑木林の意味で、「林歯科医院」のような意味でしょうか。日本語訳では親しみやすく「チュー先生」としてあります。
ネズミのチュー先生夫妻が歯科医院を開業していました。身体が小さいことを利用して、いろんな動物たちの歯を丁寧に治療するので人気がありました。ただし、看板には「猫や危険な動物は扱いません」と書いてありました。
ところが、ある日むし歯が痛くてたまらないキツネがやって来ました。当初は断るのですが、あまり頼むので治療を引き受けることにしました。しかし、おそるおそる・・・・。無事に治療が終わったらどうなるか?!、キツネもネズミも考えていました。
小さなネズミが大きな動物の歯を治療することは、それだけで困難な要素が沢山あります。それを経験と智恵と工夫と夫婦の連携で、うまく成し遂げてきたのが、このネズミたちです。画家のウィリアム・スタイグは、梯子やロープや滑車を組み合わせて、ユーモラスに描いています。そこに、さらにやっかいなキツネの患者という問題がふりかかります。ネズミたちは今度は、つっかい棒や麻酔を使って解決します。そして最後に・・・・。
身体の小さな動物が、何倍も大きな動物の問題に平気で立ち向かって、うまく解決していく痛快さは、この物語に出会った多くのこどもたちが感じ、物語に共感を得ることでしょう。また、動物たちの表情が、話の展開に従って見事に描き分けられているのも、この絵本作者の優れた要素だと思います。
Doctor De Soto Goes To Africa (ねずみの歯いしゃさんアフリカへいく)という続編もあります。
(紹介:清流祐昭, 2018年6月1日)