投稿日: Sep 17, 2016 5:15:3 PM
征矢清さく
林明子え
福音館書店
1989年5月25日 第一刷
さちという名の女の子が草木の茂った庭で遊んでいると、雨が降り出したのて木の下に入ると、すでにそこにはカマキリがいました。さらにモンシロチョウやコガネムシ、テントウムシやパンくずを運搬中のアリもそこに入ってきました。やがて雨が止んで、さちはお母さんの待つ家に帰って行くお話です。 マリー・ホール・エッツにも、野生の動物と女児の静的緊張を描いた「わたしとあそんで」という作品があります。
興味深いのは、文章では触れていない小動物や玩具が目立たないように描かれていることです。さちがしゃがんでいる背後には、玩具の箒とちり取り、急須が見えます。表紙ですでにさちが使っている姿が描かれています。いつも遊んでいるお気に入りの場所です。雨が降り出した画面にすでに尺取り虫とカタツムリ、カマキリがかすかに登場しています。
アマガエルも木の枝や葉に見えます。最初は見えなかった蜘蛛の巣が、雨足が激しくなると水滴がついて、姿を現します。そして、雨が上がり日が差すと、水滴が日光を受けて宝石のネックレスのように輝きます。小動物たちも、そこここの水滴の輝きに晴れた世界へ転換を感じ、次の行動へと踏み出します。
尺取り虫は途中で木の枝に擬態して姿を隠します。裏表紙でもカタツムリは静かに、寄り添い見守るように描かれます。尺取り虫は蛾になって飛び去ったのでしょう、もうここにはいません。
(紹介:清流 祐昭,2016年5月30日)