投稿日: Jun 05, 2017 1:48:44 AM
私事ですが、私の声は高くて細く、これが若い頃からずっと悩みでした。この声は教室では吸収されてしまうのです。教育学部出身ながら教員になるのをあきらめたのは、ひとつには声が理由です。そんな、私のような悩みをお持ちの方にはぴったりの手づくり楽器があります。牛乳パックや厚紙でつくるカズーです。
下の⑤の完成図のカズーの□の部分に口をあてて声を出すと、声が筒先のポリ袋を振動させて大きな音になります。「わー」と言っても「ゔぁ〜〜」というような声になり、声の小さい私には感激的な手づくり楽器です。簡単につくることができます。ぜひ試してみてください。
紙でつくるカズーは、繁下*がよく紹介しています。私は、少し作り方をかえました。下に作り方を載せます。
作り方
①牛乳パックを開いて洗い、よく乾かして、10×12cmくらいに切り取ります。牛乳パックくらいの厚紙でも大丈夫です。
②以下のように穴をあけ、両面テープを紙の両端にはります。
◆上の繁下の著書では、丸めたあとで穴をあけるようになっていますが、やってみるとなかなかむずかしいので、丸める前に穴をあけました。
③丸めて筒にします。筒にしたら、もういちど両面テープの貼り目をセロハンテープで密着させます。
◆丸める時、繁下は同著で、芯として塩ビ管等を利用するといいと書いています。私は、単3電池3本ほどを縦につなげてセロハンテープでとめ、それを芯にしました。芯なしでも作れないこともありません。
④ポリ袋を7×7cmくらいに切って片側の筒先にかけ、セロハンテープで留めます。
◆ポリ袋は厚手のものではなく、スーパーマーケットなどで肉や魚等を買った時に入れる薄手のものを使いましょう。厚手のポリ袋では音がうまくひびきません。
⑤余分なポリ袋片は切り取りましょう。これで完成です。
カズーは、もちろん、声の大きさに関係なく楽しむことができます。幼稚園にかかわっていた時、年長組の親子行事で一緒につくってみました。穴あけは大人、丸めたりテープを貼ったりポリ袋をつけたりするのは親子共同作業です。少しシールなども用意して、好みで貼ったりもしました。声が変身しますから、子どもたちも大喜びです。
作って、親子でじゅうぶん鳴らして遊んだあとは、「あしたも元気で」**(作詞:福尾野歩、作曲:才谷梅太郎)で交互に歌って(演奏して?)楽しみました。このうたは、以下のような歌詞です。( )の中はその前の部分を繰り返します。
青い空(青い空) 白い雲(白い雲)
みどりの(みどりの) やまなみ(やまなみ)
ぼくらに(ぼくらに) うたうよ(うたうよ)
あしたも 元気でと
この歌を以下のように楽しみました。
1 子どもが歌い、親が( )の中をカズーで吹く。“あしたも元気でと”はいっしょに歌う。
2 親が歌い、子どもが( )の中をカズーで吹く。以下1と同じ
3 親子ともにカズーで交互に演奏する。
子どもたちは、親子行事前にこの歌を覚えていたので、1では得意げに歌を先導して歌いました。自分で歌ったメロディーを親がカズーで演奏してくれるので、とても嬉しそうでした。もちろん、その逆の2も。
カズーを吹くと自分の声がポチ袋に反応してビリビリしますから、音が大きくなる驚きや音がかわる楽しさに加えて、音と振動の関係を実感することできます。それを、自分たちでつくって体感することができるのがなによりです。幼児期に音色や大きさ、振動を感じて遊ぶことができる、面白い教材だと思います。
前回の私の担当の時に、子どもたちが、大きい音、小さい音、だんだん大きくなる、だんだん小さくなる等を知っていくには、f や p などの表記と形式的に結びつけていく学習の前後に、たくさんの体感が必要ではないかというようなことを書きました。上のカズーもそのひとつだと思います。
そのような活動を経験した子どもたちは、音に注視するだけでなく、自ら音を操作していくようにも思います。次回は、そのような小学生の例をご紹介したいと思います。
(執筆:山中 文)
*繁下和雄『あそんで楽器』(フレーベル館 2003年)に掲載されています。繁下は、他にも『シリーズ親と子でつくる 紙でつくる楽器』(創和出版、1987年)などを出しており、これまでにたくさん紙でつくることができる手づくり楽器を紹介しています。氏の本をもとに、小学校・中学校でリコーダーやアルペンホルンを作った時も面白かったです。
**「あしたも元気で」は、同前の繁下の著書にも載っています。カズーの例として載せているわけではなく、手遊び歌として載せていますが、それも楽しい手遊びです。