投稿日: Sep 19, 2016 2:44:54 AM
江國香織さんの本を2冊、『絵本を抱えて部屋のすみへ』と『日のあたる白い壁』を紹介します。
『絵本を抱えて…』は、世界中の絵本を紹介した本で、『日のあたる…』は、古今東西の画家の絵を紹介した本です。
どちらも、江國さんのとぎすまされた感性とことばで、多くの作品や作家について、一節ずつ、丁寧に語られます。評論や解説とも違う、ジャンルを定めにくい内容ですが、ある種の感想文だと思います。でもその文章は決してひとりよがりでなく、作品を、作家を、自分だけのものとするこのうえない幸福への、ひとつの正しい方法を教えてくれます。
まだ自分が出逢っていない作品にもいとおしさを感じ、知っていた作品は再発見されます。そしてその一つひとつに会いたくなります。部屋のすみでたった一人で読む小さな文庫本から、視界が開け、友人が増えていきます。
一つひとつがかけがえのない作品で、一人ひとりがかけがえのない作家であるというあたり前のことを、この2冊の本は教えてくれます。好き嫌いで出逢いの扉を狭くするのがいかにもったいないことかに気づかせてくれます。
そう書きながら、人との出逢いも同じかなとふと思いました。
(紹介:矢藤 誠慈郎,2015年1月4日)
『絵本を抱えて部屋のすみへ』 目次
わたしに似たひと―フランシスの絵本によせて
ここではないどこか―センダックの絵本によせて
生活の愉しみ―プロヴェンセン夫妻の絵本によせて
個人的なこと―童謡絵本によせて
地上の天国―バーバラ・クーニーの絵本によせて
憧れのパリ―マドレーヌ絵本の世界
日常生活はかくあれかし―がまくんとかえるくんの絵本によせて
たくさんの人生―ビアトリクス・ポターの絵本によせて
のびのびしたアメリカ―アメリカ古典絵本の世界へ
骨までしゃぶる―グスタフ・ドレの絵本によせて
悦びのディテイル―ピーター・スピアーの絵本によせて
〔ほか〕
『日のあたる白い壁』 目次
ゴーギャンのオレンジ―ゴーキャン「オレンジのある静物」
完璧に保存される物語―カリエール「想い」
体の奥がざわめくなつかしさ―ホッパー「海辺の部屋」
祖父の家―児島虎次郎「睡れる幼きモデル」
ボナールのバスタブ―ボナール「浴槽」
ポケットに入れて―ドラクロワ「花の習作」
うつくしいかたち―東郷青児「巴里の女」
あの怠さ―パスキン「昼寝」
意志的な幸福―カサット「劇場にて」
ユトリロの色―ユトリロ「雪の積った村の通り」
宗教のような、音楽のような―ゴッホ「夜のカフェテラス」
同化するということ―荻須高徳「カフェ・タバ」
セザンヌのすいか―セザンヌ「すいかのある静物」
過渡期の人・マネ―マネ「海にとび込むイザベル」
あるべき場所のこと―グレコ「聖アンデレと聖フランシスコ」
ひらがなのちょうちょ―ルドン「ちょうちょ」
豪胆さと繊細さ―小倉遊亀「家族達」
プリミティブという力―ムンク「お伽の森の子供たち」
かつて持っていたくまのぬいぐるみ―ワイエス「グラウンドホッグ・デイ」
豊かさ、幸福さ、まっとうさ―マティス「ヴァイオリンのある室内」
インタレスティングということ―カラヴァッジョ「聖トマスの懐疑」
見知らぬ絵―カーシュテン「赤い台所」ほか
オキーフの桃―オキーフ「桃とコップ」