投稿日: May 06, 2018 9:38:15 AM
作/いしかわこうじ
偕成社
2013年6月 初版1刷発行
三つ子のきょうだいのひとり、こっちゃんが大好きだったしかけ絵本。単純なしかけなのだけれど、顔から顔に変化するのがおもしろい。本当におめんを外せるような切り込みになっているので、1歳のこっちゃんでも自分でページをめくることができる。こっちゃんは事務室にある絵本のコーナーにトコトコと歩いてきてはこの本を読んで欲しいとアピール。本を手にすると、床に置いて、自分でページをめくりはじめるのだけれど、ちょっとめくって満足すると、今度は読んで欲しくてわたしのひざに持ってきて、最後のページで「さあ、どのおめんをかぶりたい?」と聞くと、ひとつずつのお面を指さしていた。
少し大きい子どもたちにも人気があった。「かぶっているのは だあれ?」と読者に投げかけられる文章なので、もちろん子どもたちは元気に応えてくれる。おめんもきつねのおめんだったり、ひょっとこだったり、だるまだったりと、しっかりとした絵が描かれているところもいい。お面をつくるというと、子どもたちが喜ぶからとTVアニメのキャラクターを作ってしまう保育者がいたが、子どもたちはこんなおめんもちゃんと楽しめるのだと思う。わたしが一番いいなあと思っているのは「つのがかっこいい うしさんでした」とか「ちからもちのごりらさんでした」と、ただ“うしさん”“ごりらさん”というのではなく、その動物の素敵な特徴が言葉になっているところ。親子のサークルでこの本を紹介したら、終わってからかいくんのお母さんが「何でもよく食べるかっこいいかいくーん」と呼んでいた。かいくんはうれしそうに「はーい!」って返事。「いつもならぐずぐず言ってなかなか帰らないのに、ほめるって大事ですね」と、かいくんのお母さんはうれしそうだった。
(紹介:安井素子, 2018年4月30日)
いしかわこうじ/絵本作家
1963年千葉県生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。講談社童画グランプリで大賞受賞。イタリア・ボローニャ国際絵本原画展で入選。
『たまごのえほん』が造本装幀コンクールで、日本書籍出版協会理事長賞を受賞。おもな絵本の作品に『どうぶつ いろいろ かくれんぼ』『のりもの いろいろ かくれんぼ』『ふねくんのたび』『つみきくん』『つみきくんと つみきちゃん』『あかちゃん にこにこ』『あかちゃん はーい』『たまごのえほん』『はなのさく えほん』『りくの のりもの えほん』『そらの のりもの えほん』『パンダくんのおにぎり』『世界を旅するペーパーわんこ』等があり、フランス・中国・韓国・台湾など海外でも翻訳版が数多く出版されている。