投稿日: Sep 17, 2016 5:19:45 PM
パトリシア・リー・ゴーチ作
ドリス・バーン絵
おびかゆうこ訳
偕成社
2014年7月発行
クリスティーナはいろいろなものを集めるのが大好きな女の子。
でも、クリスティーナがなにより好きなのは、はこ。
はこがおおきければおおきいほど、クリスティーナはわくわくする。
そんなクリスティーナの家に ある日 おおきな冷蔵庫が届く。
「まあ なんて おおきいのかしら!」というお母さんと
「わー、こんな おおきな はこ、みたことない!」というクリスティーナが同じポーズで描かれている、このページはわたしのお気に入り。
クリスティーナは最初、そのはこをお城にして、たべものを運び込む。
わたしの小さい頃(1960年代)、住んでいた家は、外に使われていない小屋があって
そこに、自分の大事なものをたくさん、運び込んで遊んでいた。
今考えても、大人の目の届かない、それはわくわくした楽しい時間。
クリスティーナがお城なったおおきなはこに、たべものをたくさん運び込むのをみて自分の子どもの頃を思い出して懐かしくなった。
クリスティーナがお城で静かに楽しく過ごしていると、隣に住んでいる男の子ファッツが登場して、お城を壊してしまう。
このファッツとクリスティーナの、どんなにけんかしても次の日にはなにもなかったようにあそびだすという子どもでしかありえない関係がおもしろい。
この本を私と一緒に見ていた年長のゆうくんは、ファッツが、ひみつきちになったはこの上に座って壊してしまったり、レーシングカーになったはこのエンジン部分をのこぎりで切ってしまったりするのを見て「だめだなあ」と大笑い。ゆうくんならやりそうなことなのに、とわたしもクスッと笑ってしまう。
このお話はアメリカの多くの教科書に掲載されてきたそうだ。でも、教訓的なところはなく、クリスティーナが大きな箱からいろんなことを想像して、自分でアクティブにそれを実現させていくところがいい。そして、壊されても、なくなっても気にしないで、次のことを考える子どものたくましさに憧れさえ感じる。
箱を目の前に真剣に考えるクリスティーナの姿を見て、片付けるのを先延ばしにしてくれるお母さんと、クリスティーナの思いを実現させるためにちょっとだけ手を貸してくれるお父さん、そんな大人が登場することで、子ども時代を精一杯に生きる大切さが伝わってくる気がする。
(紹介:安井素子,2015年10月9日)
パトリシア・リー・ゴーチ
ミシガン州生まれ。作家、編集者。3人の子どもを育てながら、絵本や読みものを執筆。子どもが独立したあと、出版社に就職し、児童書部門の編集部長をつとめる。エリック・カールをはじめとする、さまざまな作家を担当。これまで編集した本のなかで、『月夜のみみずく』など3作品がコルデコット賞を受賞。1985年には出版社を立ちあげる。ニューヨーク在住。
ドリス・バーン
作家、イラストレーター。オレゴン州のポートランド生まれ。ニューヨークの出版社へ、イラストレーションの作品を持ちこみ、作家として活動をはじめる。はじめての作品である”Andrew Henry’s Meadow”(未邦訳)で、1965年にワシントン州知事芸術賞を受賞。ほか『クリスティーナとおおきなはこ』など。
おびか ゆうこ
東京生まれ。国際基督教大学語学科卒。出版社勤務、ドイツ留学を経て、子どもの本の翻訳や創作にたずさわっている。翻訳の作品に『エリーちゃんのクリスマス』、『うちはお人形の修理屋さん』など