投稿日: Sep 18, 2016 5:0:16 PM
かの山口昌男が学長をやっていた札幌大学での特別講義の記録。著者の晩年のほとんど最後のものだろうか。
「ホモ・ルーデンス」を素材に、フィールドワークの思い出や出会った人の挿話、本の触りなどを語りながら、学問の楽しさを解く。講義の語りが活かされていて、愉しい。お弟子さんが懇切な注をつけていて、勉強にもなる。
中身そのものはその著作に親しんでいる者には読んだことのあることばかりではあるけれど、でも、講義に連なっているような生き生きした様子は魅力的です。
「こういう遊びの文化を保持する世界の住人の営みを知っておくということは、われわれの世界がそうはならなかったもう一つのもの、もう一つの姿、オルタナティヴな世界について、われわれが知覚を、情報をもつということである。文化を研究の対象とすることは、そのような意味で「失われた世界」を探求する愉しみ、学問の大きな愉しみであるということをお話しして、講義はこれでおしまいにします。」と締めくくられる。
もっと聞きたいものだけれど。
(紹介:無藤 隆,2014年8月31日)