投稿日: Sep 18, 2016 4:19:48 PM
著者は作業療法士で、自閉症の子どもの療育が専門。
感覚統合療法の入門的テキストだが、著者の実践的工夫が多く紹介されている。また実証研究もまだ少ないようだが、かなりが挙げられている。 感覚過敏(時に感覚鈍感)の子どもなどの理解や対応に有益な対応の工夫がたくさん示されて、きっと役立つだろう。
感覚統合の試みは障害児教育の現場で一時期よく見たけれど、その後、かなり減った気がする。社会性の開発に焦点が移り、感覚統合はそのためにはあまり有効でないと思われたからだろう(その点は著者も認めている)。しかし、感覚面の問題を大部分の自閉症児が抱えていることは確かだから、こういったアプローチを組み合わせる必要はあるのではないだろうか。
著者は留意点を次のように述べている。
感覚統合療法はASDそのものを治すものではない。
感覚統合療法がASD児の社会性の障害を改善するという科学的検証はまだ十分されていない。
子どもそれぞれで感覚統合療法の必要度・効果は異なる。
他の教育や指導の併用が必ず必要である。
感覚統合理論を正しく理解した療法士から感覚統合療法を受けるべきである。
なお、最後の点は、著者は、とはいえ、保育園や小学校などで担任の保育士・教師が感覚統合療法にヒントを得て、対応することは大いに奨励しています。
(紹介:無藤 隆,2014年8月13日)