投稿日: Sep 19, 2016 5:53:54 AM
サウンド・エデュケーションは、マリー・シェーファーによって提唱されると、音楽教育の中でたちまち話題となりました。それまでの音楽教育で取り上げられてこなかった分野に焦点が当てられていることが、人気のひとつでしょう。この本は、その翻訳本のひとつです。
音楽教育は、音楽作品を主に取り上げています。それに対して、サウンド・エデュケーションは、音楽の素材である音そのものに焦点をあて、耳を鍛え、音を認識していくことをめざしています。そのために100の課題をとりあげています。
たとえば、数分間沈黙して聴きとれた音をすべて書き、それらを、遠くの音と近くの音に、人工的な音と自然音に、一過性の音と持続的な音に等々分類したりします。
また、目をつぶって、だれかが鳴らしながら歩く楽器の音色の移動を、指でおいかけます。
その日一番美しかった音、一番大きかった音、はじめて聴いた音など、音について日記を書いてみよう、という課題もあります。
誰でも行え、しかもこれまで取りあげられなかった内容で珍しく、面白いとあって、日本の就学後の教育現場で多くの実践が生まれました。幼児期においても、季節や行事に伴って歌うというような音楽活動が多い中、新しい音教育として注目されているかと思います。
ただ、これは、音という素材を中心に、聴き方を学ぶためのものです。それは、音楽教育にとって必要なことではありますが、音楽そのものではありません。そこから音楽活動へどのように誘うのか、ということを考えながら、まずは100の課題にチャレンジしてみるのはいかがでしょう!?
(紹介:山中 文,2015年7月31日)