投稿日: Sep 18, 2016 4:35:37 PM
スウェーデンとアメリカの絵本研究者が、絵本の文章と絵の関係を分析する。
言葉と絵の関係を、対称・重複,補完、敷衍・増強、対立・矛盾に分けて、多くの絵本の実例を挙げながら、その微妙なあり方を分析する。
二十世紀が進むにつれて、作家/画家が意図するものと読者に与える印象は、異なるものになってきた、ことばと絵という二種類の”語り”によって描かれる細かな描写や全体像、さらには出来事が、ことばと絵との”関係”によって明確でわかりやすくなるということはなくなった。むしろ、・・・読者は自分有りの答えを見つけ、作品中の謎を自分なりに解明し、さらに作家/画家と力を合わせて筋書きと物語をつくり、自分で解釈をするように求められる。
もしも、はっきりした物語構造をもち、出来事が時間軸に沿って起こり、明快で、できれば教訓的な語りの声があって、そして何よりファンタジーとリアリズムの間に―つまり、客観的な真実と主観的な認識のあいだに―はっきりした揺らぐことのない境界線があるということ、それを「素朴」という言葉でまとめるのであれば、本書がとりあげた作品の多くは伝統的な「素朴な」児童文学という概念からかけ離れている。
ことばと絵の相互関係は、絵本の意味伝達の複雑さをつきとめ、明らかにすることができるという意味で、非常に有益で、これからも期待のできるものであることがわかった。
このように本書は、絵本の特に現代的さらに言えばポストモダン的なあり方を言葉と絵の間の関係を通して解明しようというもので、啓発的である。 いくつかの絵本の絵は引用されているが、多くはそうでないので、それを見ているか、手元に置いて参照できれば、いっそう理解が行き届くだろうが、半分以上は翻訳されていないようなので、手に入りにくいのだろう。そこがちょっと残念だ。
(紹介:無藤 隆,2014年5月15日)