投稿日: Sep 23, 2016 4:29:37 PM
2016年最後となる今回の記事では、私が今年一番ガツンと衝撃を受け、様々なことを考えさせられた、無藤隆先生の6月27日の記事を紹介いたします。
なぜ保育所は迷惑施設であり得て、小学校はそうではないのか。
保育所反対運動はありうる。(今時、小学校の設立はないだろうが)小学校の廃校への反対運動もある。どうしてこの逆の受け止め方があるのだろうか。
たぶん、第一になにより、保育所は一部の家庭のため、小学校はすべての家庭のため、という認識の違いがあるのではないか。第二に、むろん、その重要性(乳幼児の保育・教育と小学校教育)についての認識が異なるのだろう。第三に、その公的特質の違いがあるかもしれない。
それは第一に、保育所も幼稚園も含めて、地域のすべての子供のためにあることをはっきりとさせねばならない。
第二に、乳幼児の教育を受けることは子どもの成長に不可欠で大事なことだという認識を広げねばならない。
第三に、どの人も保育所に必要があれば子どもを入れることはあり得るのだと考えるようにしていかねばならない。
そのために、保育所は幼稚園とともに、もっと地域に根ざし、(子どもを預ける家庭以外の)地域に開かれていかねばならないのではないか。(私立幼稚園の方が多少は努力している気がするが。)
第二に、単に子どもを預かるだけではなく、乳幼児の「教育」の場であることを明確にし、すべての子どもがそれを受けることの大切さを訴えるべきだ。
第三、地域住民の参加を得て、理事会を構成するなどの努力も望まれよう。
(記事はこちら)
私が通っている大学は総合大学で、学部生時代に部活動をしていた経験もあるため、経済学部、経営学部、理学部、法学部など様々な学部の先輩、友人、後輩がいます。そのような教育系の学部以外の人と教育について話すと、様々な発見や驚きがあります。
まず、幼稚園と保育所の違いを知っている人は、ほぼ皆無です(結婚や出産をまだ経験していない若い世代の人が周りに多いことも原因かもしれませんが)。以下、彼らと話している中でよく出てくる質問を挙げてみます。
「幼稚園と保育所って何が違うの?」「保育士と幼稚園の先生って何か違うの?」「幼稚園って、小学校みたいに一人一人に机と椅子がないの?!何があるの?!何してるの?!」「教科書もないの?!」「子どもが賢く育つにはどこに入れたらいいの?」「えー5歳ってしゃべれるんだ・・・」などなど・・・・
かく言う私も、大学に入学するまではそのような感じでした。
小学校中学年のときに、近所の仲良くしていたご家族に赤ちゃんが生まれました。毎日のように一緒に遊んでいるなかで、その子が日々いろんなことができるようになる姿を見たり、はじめて私の名前を呼んでくれたりという経験をしました。それをきっかけに「保育士になりたい!」と思うようになりました。
しかし、大学に入るまでは、私も幼稚園と保育所の違いはよく分かっていませんでしたし、園でどんなことをしているのかもよく分かっていませんでした。教育実習は三回生のときでしたので、それまで園に行くこともありませんでした。そのため、授業で幼児の話を聞いても、分かるようで分からない。。。幼稚園教育要領を読んでも、子どもの姿が浮かんでこないため、当時の私にとっては抽象的すぎて分からない。。。そのような状況でした。
そのため、教育実習を終え、大学の授業を受けたときの、あの「わかる!!子どもの姿が浮かんでくる!!」という実感を伴った理解には、とても感動を覚えました。
乳幼児期の教育・保育に関して、おそらく関係者が思っている以上に、世間の人は知らないことが多いように感じます。
文部科学省のHPで公開されている「文部科学統計要覧(平成28年版)」の「10.大学」を見てみました(資料はこちらで見ることができます)。
この資料によると、平成27年度では教育系の大学に通う学生は、全体の学生数2,556,062人のうち190,218人で全体の7.4%。短大に関しては127,836人中48,267人(全体の37.8%)。大学院を見てみると、修士課程では158,974人中9,796人(全体の6.2%)、博士課程では73,877人中2,258人(3.1%)となっています。全部合わせると、2,916,749人中、教育について学んでいる学生は250,539人で、全体の約8.6%です。
この中で、乳幼児教育・保育を専攻しているのは果たして何人なのか。幼稚園教諭や保育士の養成を行っている学校に通っているのは何人なのか。色々と気になりますが、8.6%をさらに下回ることは間違いないでしょう。
また、記憶の定着の時期が関係して、大人になるとはっきりと乳幼児期のことを覚えていない人が多いということも原因として挙げられるかもしれません。私自身も、断片的な記憶しかありません。
近所に子どもがいるという状況や、子どもと触れ合う機会が減っているため、子どもになじみのない人が増えている現状もあるかもしれません。
以上のことを考えると、ますます、ていねいに、乳幼児教育・保育について、この時期の子どもの姿について情報を発信する必要があるように感じます。
乳幼児教育・保育の関係者は、当たり前のようにその重要性について分かっています。そして、当たり前のように使う言葉もたくさんあるように思います。関係者の間では、「環境構成」や「遊びを通した学び」という言葉は、説明なしで理解できるものかもしれません。しかし、関係者以外の人からすれば、もしかしたら保護者の方々も、「どうして遊ぶことが学ぶことにつながるのかな」と思うかもしれないし、園で遊んでいる子どもの姿を見ても、子どもがいま何を学んでいるのか、どんな力が育まれているのかということは、ぱっとは分からないのではないでしょうか。
そのため、そういったことを言語化し、発信していく必要があると私は考えています。簡単にできそうで、意外と難しいことのように感じています。しかし、様々な園に行かせていただいたり、先生方のお話を聞く機会を作っていただいたりする中で、そういったことに精力的に取り組まれている先生方、園があるということを知りました。私自身、そのような機会を通して学ばせていただくことで、乳幼児教育・保育の重要性を発信していく力をつけていきたいと思っています。
(執筆:清山莉奈,2016年11月20日)